FAO56モデルを用いた土壌の乾湿指標によるダイズ乾湿害の実態解析
ダイズの低収要因は圃場ごとに異なるが,その低収要因の背景には,土壌水分の過湿,過乾燥が存在することが指摘されている.本研究では,FAO56モデルによって土壌水分を推定し,これをもとに土壌の乾湿害の両リスクを評価するために指標WI (Wet Index) を作成した.WIは0に近づくほど乾燥,1に近づくほど湿潤であることを示す指標とした.また,FAO56モデルの性質を考慮して,湿害のリスク評価には,各生育ステージにおいてモデルが仮定する最大水分 (WI=1) になる日数割合 (RWI) を採用した.これらの指標を用いて,2015年から2017年の3か年で全国16道県の現地農家圃場から収集した33...
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Published in | Japanese journal of crop science Vol. 89; no. 4; pp. 337 - 345 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本作物学会
05.10.2020
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Subjects | |
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Summary: | ダイズの低収要因は圃場ごとに異なるが,その低収要因の背景には,土壌水分の過湿,過乾燥が存在することが指摘されている.本研究では,FAO56モデルによって土壌水分を推定し,これをもとに土壌の乾湿害の両リスクを評価するために指標WI (Wet Index) を作成した.WIは0に近づくほど乾燥,1に近づくほど湿潤であることを示す指標とした.また,FAO56モデルの性質を考慮して,湿害のリスク評価には,各生育ステージにおいてモデルが仮定する最大水分 (WI=1) になる日数割合 (RWI) を採用した.これらの指標を用いて,2015年から2017年の3か年で全国16道県の現地農家圃場から収集した337データを解析したところ,どの生育ステージにおいてもWIの最小値は0.22以下,RWIの最大値は50%以上であったことから,地点や年次の違いによって,同じ生育ステージでも乾燥条件の地点もあれば,湿潤条件の地点もあることが示された.WI及びRWIと収量の関係を偏相関係数で評価すると,WIは栄養生長中期,子実肥大後期~成熟期に正の相関があり,RWIは栄養生長初期及び後期に負の相関,子実肥大後期に正の相関があった.以上の結果は既往の報告とよく一致し,我が国のダイズ作における乾湿害の実態をよく評価し,乾湿害のリスクが高い生育ステージを明らかにしたと考えられた. |
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Bibliography: | 936307 ZZ00014890 |
ISSN: | 0011-1848 1349-0990 |
DOI: | 10.1626/jcs.89.337 |