コムギ湿害対策のための肥効調節型肥料の基肥時土壌表層施用ならびに速効性窒素追肥の効果

我が国では,コムギは主として水田転換畑で栽培されるので,湿害が大きな問題となっている.本研究では,過湿条件下で根系機能が抑制され,養水分吸収量が低下することが湿害の主な原因と考え,これを軽減するための施肥法として,基肥としての肥効調節型肥料の土壌表層への施用と速効性肥料を用いた追肥の効果を,窒素吸収量を指標にして評価した.4年間にわたり,農林61号をポットで栽培し,一時的な湛水によって湿害を発生させ,その水位と処理時期によって強度を調節した.その結果,表層3cmに局所施肥した場合に,全層や深層に施肥した場合より,窒素吸収量が増え,その効果には,湿害強度による差は認められなかった.また追肥に関し...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 84; no. 3; pp. 256 - 263
Main Authors 山内, 章, 遠藤, 征馬, 三屋, 史朗, 林, 智仁, 林, 元樹, 谷, 俊男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 2015
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.84.256

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Summary:我が国では,コムギは主として水田転換畑で栽培されるので,湿害が大きな問題となっている.本研究では,過湿条件下で根系機能が抑制され,養水分吸収量が低下することが湿害の主な原因と考え,これを軽減するための施肥法として,基肥としての肥効調節型肥料の土壌表層への施用と速効性肥料を用いた追肥の効果を,窒素吸収量を指標にして評価した.4年間にわたり,農林61号をポットで栽培し,一時的な湛水によって湿害を発生させ,その水位と処理時期によって強度を調節した.その結果,表層3cmに局所施肥した場合に,全層や深層に施肥した場合より,窒素吸収量が増え,その効果には,湿害強度による差は認められなかった.また追肥に関しては,湛水処理期間中でなくても,湛水処理が終了後の湿害の症状がはっきり出たあとの追肥でも,生育回復が可能であった.またこのような追肥によって,湿害の程度には関係なく,通常の適湿条件と同等なレベルまで窒素吸収量を増加させ,生育を回復させることができた.このとき,植物体は追肥された窒素を表層に発達した根系で吸収しただけでなく,湿害によって低下していた根系の吸収機能が追肥によって回復し,肥効調節型肥料から溶出した窒素を再び吸収したと推察される場合も認められた.以上より,肥効調節型肥料の基肥としての表層施用と速効性窒素追肥は,過湿条件下においても比較的高い機能を維持できる表層の根系を利用した湿害軽減また生育回復のための施肥法であると結論した.
Bibliography:901114
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.84.256