知的障害者の作業参加を促す移動栽培と夜間の根域加温栽培の有用性
農業にはさまざまな作業工程があり,作業を細分化することで,知的障害者の特性に応じて役割分担することができる.このため,農業は障害者の就業の場として大きな可能性を秘めているが,障害の特性によっては地植え栽培での一部の作業が難しいことと,冬季には植物の生育が遅くなるため,作業を確保することが難しいという課題がある.本研究では,特別支援学校において,プランターを使用して作業しやすい場所で培地づくりや播種を行った後,プランターを栽培場所に移動させて栽培する「移動栽培」と,夜間の根域加温栽培により解決を図った.調査は2項目について行った.1つ目は移動栽培を,農作業分析表を元に整理するとともに,生徒の作業...
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Published in | 農作業研究 Vol. 57; no. 3; pp. 179 - 189 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農作業学会
20.09.2022
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Subjects | |
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ISSN | 0389-1763 1883-2261 |
DOI | 10.4035/jsfwr.57.179 |
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Summary: | 農業にはさまざまな作業工程があり,作業を細分化することで,知的障害者の特性に応じて役割分担することができる.このため,農業は障害者の就業の場として大きな可能性を秘めているが,障害の特性によっては地植え栽培での一部の作業が難しいことと,冬季には植物の生育が遅くなるため,作業を確保することが難しいという課題がある.本研究では,特別支援学校において,プランターを使用して作業しやすい場所で培地づくりや播種を行った後,プランターを栽培場所に移動させて栽培する「移動栽培」と,夜間の根域加温栽培により解決を図った.調査は2項目について行った.1つ目は移動栽培を,農作業分析表を元に整理するとともに,生徒の作業様態の記述と教師のインタビューデータから分析した.2つ目は,移動栽培でプランターを温床マット上に設置して簡易的に根域加温栽培を行い,地温の変化,電気代,収穫物の調査を行った.その結果,移動栽培では慣行法に比べ作業難易度が低く,パターン化された単純な作業の繰り返しのため,どの生徒も方法を理解して実施できることが明らかになった.また,移動栽培により根域加温を行うことで,カブとホウレンソウの栽培期間が短くなる上,慣行法と同等以上のものを収穫することができ,電気代はカブで1株約25.8円,ホウレンソウで15円であった.これらのことから,知的障害者にとって「移動式根域加温栽培」の有用性の示唆を得ることができた. |
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ISSN: | 0389-1763 1883-2261 |
DOI: | 10.4035/jsfwr.57.179 |