熱硬化性バイオプラスチックのプレポリマーにおける常温安定性

熱硬化性バイオプラスチックは,耐熱性が要求される電子部品に利用され,糖類とポリイソシアネートの混合スラリーである「プレポリマー」を加熱することで得られる.しかし,室温では不安定で自己硬化性を有している.本研究の目的は,プレポリマーにおける自己硬化プロセスを解明することにあった.結果として,自己硬化プロセスは4段階に分かれ,ポリイソシアネート基への水添加,アミン基の生成,尿素基の生成,およびビウレット基の生成であり,糖類の吸着水によって引き起こされ,尿素基生成およびビウレット基の架橋形成で硬化が進行することがわかった.また,糖類由来のプロトンとポリイソシアネートから尿素基が直接的に生成される新し...

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Published inJournal of Applied Glycoscience Vol. 57; no. 2; pp. 95 - 103
Main Authors 岡本, 安史, 橋本, 篤, 末原, 憲一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本応用糖質科学会 2010
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Summary:熱硬化性バイオプラスチックは,耐熱性が要求される電子部品に利用され,糖類とポリイソシアネートの混合スラリーである「プレポリマー」を加熱することで得られる.しかし,室温では不安定で自己硬化性を有している.本研究の目的は,プレポリマーにおける自己硬化プロセスを解明することにあった.結果として,自己硬化プロセスは4段階に分かれ,ポリイソシアネート基への水添加,アミン基の生成,尿素基の生成,およびビウレット基の生成であり,糖類の吸着水によって引き起こされ,尿素基生成およびビウレット基の架橋形成で硬化が進行することがわかった.また,糖類由来のプロトンとポリイソシアネートから尿素基が直接的に生成される新しいプロセスを予測した.フルクトース,マルトース1水和物および加湿グルコースには,硬化を遅らせる特性がみられた.しかし,糖類の結晶水と結晶化度は自己硬化に影響を与えなかった.糖類の吸着水の影響で,尿素基およびビウレット基の生成は遅延し自己硬化が抑制されることから,糖類の吸着水の調整が大変重要となる.その結果,この研究は工業的製造プロセスにおいて安定してプレポリマーを生産するのに大変重要なステップとなる.
Bibliography:ZZ20010553
791996
ISSN:1344-7882
1880-7291
DOI:10.5458/jag.57.95