イネ止葉における緑葉維持能力の多様性

穂ぞろい期イネの止葉中央部葉片を35℃暗黒下でプラスチックバイアル中の水に1週間程度浮かべ,培養後/培養前SPAD値比で示される緑葉維持能力(GM)が遺伝的多様性をカバーする世界と日本のイネコアコレクションおよび中国の高収量hybridとinbred品種でどれだけの変異があるかを調べた.その結果,ジャポニカのGMはインディカに比べやや高い傾向があり,また熱帯ジャポニカはジャポニカよりやや低かった.これらの品種の中から穂ぞろい期にSPAD値が高いにもかかわらずGMが高く保たれる,あるいはGMが著しく低下する緑葉維持能力の典型的に異なる品種が見いだせた.また,中国の高収量 (9~11 t ha–1...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 90; no. 2; pp. 177 - 181
Main Authors 小葉田, 亨, 富阪, 康平, 篠永, 美和, Peng, Shaobing
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.04.2021
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Summary:穂ぞろい期イネの止葉中央部葉片を35℃暗黒下でプラスチックバイアル中の水に1週間程度浮かべ,培養後/培養前SPAD値比で示される緑葉維持能力(GM)が遺伝的多様性をカバーする世界と日本のイネコアコレクションおよび中国の高収量hybridとinbred品種でどれだけの変異があるかを調べた.その結果,ジャポニカのGMはインディカに比べやや高い傾向があり,また熱帯ジャポニカはジャポニカよりやや低かった.これらの品種の中から穂ぞろい期にSPAD値が高いにもかかわらずGMが高く保たれる,あるいはGMが著しく低下する緑葉維持能力の典型的に異なる品種が見いだせた.また,中国の高収量 (9~11 t ha–1) のhybridやinbredイネのGMにも大きな品種間差が見られ,GMと収穫指数の間には正の直線関係があり,さらにGMと収量/(茎葉重×SPAD値) との間にも正の直線関係があったため,緑葉維持能力が茎葉の子実収量生産効率を高めていることが示唆された.このように,イネの登熟期における緑葉維持能力には品種間に幅広い多様性があり,登熟期の子実生産効率を高める遺伝資源として利用できる可能性がある.
Bibliography:937845
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.90.177