関東地域の有機栽培に適したダイズ品種の特性および栽培体系

わが国の有機ダイズの生産量は需要に対して少なく,生産拡大のための有機栽培技術の確立が求められている.茨城県つくば市における3年間の無農薬無化学肥料栽培条件下のダイズ栽培試験において得られた結果から,有機栽培に向けた品種特性および栽培体系の構築に関する知見を得た.早晩性の異なる4品種を比較したところ,中晩生や晩生のダイズ品種では早生品種より整粒重が高く,対慣行区比も高い傾向にあった.開花盛期までの栄養成長期には有機区と慣行区の間に生育量の差はみられなかったが,子実肥大中期には有機区では慣行区よりカメムシ等による吸汁害率が高まり,莢乾物重が低かった.早生のタチナガハと晩生のフクユタカの播種時期を4...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 85; no. 1; pp. 23 - 32
Main Authors 田澤, 純子, 三浦, 重典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 01.01.2016
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Summary:わが国の有機ダイズの生産量は需要に対して少なく,生産拡大のための有機栽培技術の確立が求められている.茨城県つくば市における3年間の無農薬無化学肥料栽培条件下のダイズ栽培試験において得られた結果から,有機栽培に向けた品種特性および栽培体系の構築に関する知見を得た.早晩性の異なる4品種を比較したところ,中晩生や晩生のダイズ品種では早生品種より整粒重が高く,対慣行区比も高い傾向にあった.開花盛期までの栄養成長期には有機区と慣行区の間に生育量の差はみられなかったが,子実肥大中期には有機区では慣行区よりカメムシ等による吸汁害率が高まり,莢乾物重が低かった.早生のタチナガハと晩生のフクユタカの播種時期を4水準とし,各種要因と整粒重の関係をみたところ,有機区ではタチナガハでは8月中旬に,フクユタカでは8月上中旬に開花期を迎えた場合に整粒重が最も高かった.特にフクユタカは7月中旬までに播種し,8月中に開花期を迎えれば200 g m-2以上の整粒重が得られると推察された.有機区では成熟期の子実の吸汁害率は播種時期が遅くなるほど低くなる傾向が認められたが,食害粒率は極晩播で高まった.これらのことから,関東地域のダイズ有機栽培では,早生品種を標準播種適期よりやや遅い7月中旬ごろに播種するか,もしくは晩生の品種を7月上旬,遅くとも中旬までに播種する栽培体系が適しており,それにより収量ポテンシャルを維持しつつ虫害等を回避できると考えられた.
Bibliography:901869
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.85.23