穂肥重点施肥による多収パン用品種「せときらら」の高品質多収化

西南暖地向けパン用コムギ品種「せときらら」は収量が高いものの,子実タンパク質含有率が低くなりやすいという特徴がある.本研究では,「せときらら」の高品質多収化を目的として,基肥や分げつ肥を省略し,穂肥を増肥した穂肥重点施肥が,収量や収量構成要素,子実タンパク質含有率 (GPC) におよぼす影響を検証した.また,穂肥重点施肥をベースとして,基肥や分げつ肥窒素の比率および出穂前総窒素施肥量を増やすことによって,収量やGPCを一層高められるかどうかも検証した.穂肥重点施肥区は,2015/16年および2016/17年作期では収量が11~40%高まった.収量が高まった原因は,穂数が16~23%増加したため...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 88; no. 2; pp. 98 - 107
Main Authors 荒木, 英樹, 高橋, 肇, 水田, 圭祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.04.2019
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.88.98

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Summary:西南暖地向けパン用コムギ品種「せときらら」は収量が高いものの,子実タンパク質含有率が低くなりやすいという特徴がある.本研究では,「せときらら」の高品質多収化を目的として,基肥や分げつ肥を省略し,穂肥を増肥した穂肥重点施肥が,収量や収量構成要素,子実タンパク質含有率 (GPC) におよぼす影響を検証した.また,穂肥重点施肥をベースとして,基肥や分げつ肥窒素の比率および出穂前総窒素施肥量を増やすことによって,収量やGPCを一層高められるかどうかも検証した.穂肥重点施肥区は,2015/16年および2016/17年作期では収量が11~40%高まった.収量が高まった原因は,穂数が16~23%増加したためであった.穂肥重点施肥区のGPCは,収量が増加したにもかかわらず,いずれの作期も慣行分施区と同程度以上となった.一穂粒数は,いずれの作期でも穂肥重点施肥区で増加しなかったが,千粒重は出穂期から成熟期の積算降水量が少なく,積算日照時間が多い年次では穂肥重点施肥区が慣行分施区に比べて2.3 g重かった.穂肥重点施肥の収量は,基肥や分げつ肥の窒素施肥量,出穂前総窒素施肥量を増やしても,500~550 g m–2までしか高まらなかった.成熟期の地上部窒素蓄積量も,出穂前総窒素施肥量を10~24 g m–2まで増加させても12~16 g m–2を上回らなかった.穂肥重点施肥は,「せときらら」のような多収パン用コムギ品種でも収量を高めつつ,子実タンパク質含有率の低下を防ぐことができたことから,多収パン用品種に有効な施肥方法であると考えられる.
Bibliography:927352
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.88.98