細胞内共生細菌Cardiniumの特徴およびそのゲノム解読

昆虫を始めとする節足動物とその体内の微生物との共生関係として,相利共生と片利共生に分けられる。宿主の生存に必須な相利共生に対して,片利共生は,宿主自体の生存にはあまり影響せず,寄生とも明確な区別をつけることのできない共生形態である。節足動物体内の片利共生細菌は,宿主への適応度を増加させることで自らの感染を拡大させる。その中には宿主の生殖異常を引き起こす細菌が含まれており,生殖異常を引き起こすことで自らの感染を個体群内に広げていく。また,水平伝播することにより,様々な生物種間にも感染すると考えられる。そのような細菌として最もよく知られているのがWolbachiaであるが,Wolbachiaとは系...

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Published inSanshi, konchū baiotekku Vol. 83; no. 3; pp. 3_251 - 3_254
Main Authors 中村, 有希, 上樂, 明也, 野田, 博明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本蚕糸学会 01.12.2014
日本蚕糸学会
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ISSN1881-0551
1884-7943
DOI10.11416/konchubiotec.83.3_251

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Summary:昆虫を始めとする節足動物とその体内の微生物との共生関係として,相利共生と片利共生に分けられる。宿主の生存に必須な相利共生に対して,片利共生は,宿主自体の生存にはあまり影響せず,寄生とも明確な区別をつけることのできない共生形態である。節足動物体内の片利共生細菌は,宿主への適応度を増加させることで自らの感染を拡大させる。その中には宿主の生殖異常を引き起こす細菌が含まれており,生殖異常を引き起こすことで自らの感染を個体群内に広げていく。また,水平伝播することにより,様々な生物種間にも感染すると考えられる。そのような細菌として最もよく知られているのがWolbachiaであるが,Wolbachiaとは系統的に異なる細菌であるCardiniumも多くの節足動物に感染しており,Wolbachiaによく似た生殖異常を引き起こすことが,この10年の間にわかってきた。本稿ではCardiniumの知見とともに,Cardiniumのゲノムについて,2つのグループからの報告と筆者らが解読中の2系統について紹介したい。
Bibliography:891005
ZZ20023854
ISSN:1881-0551
1884-7943
DOI:10.11416/konchubiotec.83.3_251