リンゴ果実切片のACC依存エチレン発生を抑制するモモ細胞壁画分について

モモ果実細胞壁画分に, リンゴ果実切片のACC依存エチレン発生を抑制する物質を見いだしたので, その諸性質を検討するとともに部分精製を試みた. 1.軟化前後のモモ果実を80%エタノール抽出し,アルコール不溶性固形物 (AIS) 画分を得た. AISをペクトリアーゼY-23とともに蒸留水に再懸濁し, 酵素消化後, その上清をエチレン測定に供試したところ,著しいエチレン発生抑制効果が認められた. 2.ペクトリアーゼY-23処理後の上清をPD-10カラムに通すと, エチレン発生抑制効果は低分子画分(6~12ml) において見いだされた. さらに, ペクトリアーゼY-23処理後の上清を透析すると抑制効...

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Published inEngei Gakkai zasshi Vol. 64; no. 2; pp. 425 - 431
Main Authors 森口, 卓哉, 真田, 哲朗, 田中, 敬一
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 園芸学会 1995
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Summary:モモ果実細胞壁画分に, リンゴ果実切片のACC依存エチレン発生を抑制する物質を見いだしたので, その諸性質を検討するとともに部分精製を試みた. 1.軟化前後のモモ果実を80%エタノール抽出し,アルコール不溶性固形物 (AIS) 画分を得た. AISをペクトリアーゼY-23とともに蒸留水に再懸濁し, 酵素消化後, その上清をエチレン測定に供試したところ,著しいエチレン発生抑制効果が認められた. 2.ペクトリアーゼY-23処理後の上清をPD-10カラムに通すと, エチレン発生抑制効果は低分子画分(6~12ml) において見いだされた. さらに, ペクトリアーゼY-23処理後の上清を透析すると抑制効果が消失した. このためこの物質の分子量は少なくとも3,000以下であることが推定された. 3.エチレン発生抑制効果の認められた低分子画分を薄層クロマトグラフィー (TLC) で展開すると, 低いRf値においてエチレン発生抑制効果が認められた.続いて#1 (Rf=0.24) および#2 (Rf=0.44) の2つの画分についてTLCプレートからの回収を行った.これら2つの画分では, エチレン発生抑制効果は#2において認められた. この#2画分には糖, ウロン酸そしてフェノール様物質が含まれていたが, 配糖体としては存在していないことが明らかとなった. 4.エチレン発生抑制効果がモモ果実のAISにおいて認められたことより, 生体でのこの物質の働きについて調べた. 軟化前後モモ果実のAISを水抽出し,その上清をエチレン測定に供試した. 軟化前の果実のAISからの水抽出画分にはエチレン発生抑制効果が認められなかったが, 軟化後果実のAISからの水抽出画分にはエチレン発生抑制効果が認められた. さらに,モモ果実の磨砕物 (モモ果肉水抽出後の残渣画分) でAISを消化後の上清をエチレン測定に供試したところ,エチレンの発生は対照区の約50%となった. モモ果肉を煮沸した後, 同様に処理したところ, エチレンの発生抑制効果が認められなかった. これらより, モモ果実のAISに低分子のエチレン発生抑制物質が存在していること, またモモ果実自体にその物質を作りだす能力のあることが明らかとなった. この物質はAIS (果実細胞壁) 由来と考えられるため, モモ果実の成熟•老化過程においてこの物質が何らかの調節機能を果たしている可能性が示唆された.
Bibliography:520737
ZZ00015006
ISSN:0013-7626
1880-358X
DOI:10.2503/jjshs.64.425