エネルギー制約下における内温動物の生理的調節(<特集>植物と動物におけるエネルギー消費)

動物がその生物活動を維持するためには、食物としてのエネルギー摂取が必要である。動物は獲得した食物をエネルギー基質とし、それらを酸化する(消費する)ことによって生物活動に必要な化学エネルギー(ATP)を得ている。この一連の代謝過程は複雑な酵素触媒反応によって支えられており、その反応は温度依存的である。一般に、高温になると分子運動が活発になり、温度が30℃から40℃に上がると分子の運動エネルギーは2~3%の上昇に過ぎないが、反応速度は200~300%まで上昇する。これはQ10の関係として認められている。したがって、動物のエネルギー消費の大小は体温の高低と密接な関係があることが分かるだろう。内温動物...

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Published inNihon Seitai Gakkai shi Vol. 53; no. 1; pp. 49 - 53
Main Author 新妻, 靖章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生態学会 01.04.2003
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ISSN0021-5007
2424-127X
DOI10.18960/seitai.53.1_49

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Summary:動物がその生物活動を維持するためには、食物としてのエネルギー摂取が必要である。動物は獲得した食物をエネルギー基質とし、それらを酸化する(消費する)ことによって生物活動に必要な化学エネルギー(ATP)を得ている。この一連の代謝過程は複雑な酵素触媒反応によって支えられており、その反応は温度依存的である。一般に、高温になると分子運動が活発になり、温度が30℃から40℃に上がると分子の運動エネルギーは2~3%の上昇に過ぎないが、反応速度は200~300%まで上昇する。これはQ10の関係として認められている。したがって、動物のエネルギー消費の大小は体温の高低と密接な関係があることが分かるだろう。内温動物である鳥類や哺乳類は、日周や年周による小さな変動があるものの、それらの体温は、一般に37~41℃と高い温度で一定に保たれる。この高体温は、どのような環境においても素早い運動を可能とし、餌を獲得するとき、あるいは捕食者から逃げるときなどに、利点となる。また、外温動物が活動することのできない、例えば極域のような低温環境への進出を可能としている。しかし、この高い体温の維持には、大きなエネルギー消費が必要とされる。小型哺乳類は37℃の体温を維持するのに同じ大きさのトカゲの代謝速度と比較すると4~11培も大きなエネルギーを消費しなければならない。このような内温動物が、数ヶ月にも及ぶ冬期の餌不足や、潜水中の数分間という僅かな時間における酸素不足といったエネルギー制約にさらされると、彼らはエネルギー消費を節約するため体温を低下させることが知られている。
Bibliography:671234
ZZ00015063
ISSN:0021-5007
2424-127X
DOI:10.18960/seitai.53.1_49