卵殻透過処理によるカイコ受精卵への外来物質導入の立証試験

カイコ受精卵の超低温保存法は複数の研究者により検討されてきたが,正常な個体は得られていない。超低温保存を行うにあたり,卵殻透過処理を行った卵では凍結保護剤が卵内に浸透していないのではないか,という可能性がある。そこで外来物質を卵内に浸透させることができるかどうかの証拠を得るため実験を行った。卵殻を通して外来物質の卵内への透過性を高める目的で,次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた卵殻透過処理法の有効性を検討した。まず,2.5%次亜塩素酸ナトリウム+1% Tween 80水溶液を用いた透過処理の時間が卵の孵化率に及ぼす影響を調査した。その結果,処理時間が5分を超えると孵化率が低下し,6分では著しく低...

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Published inSanshi, konchū baiotekku Vol. 90; no. 3; pp. 3_195 - 3_200
Main Authors 小瀬川, 英一, 田中, 大介, 千葉, 一樹, 中村, 匡利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本蚕糸学会 2021
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ISSN1881-0551
1884-7943
DOI10.11416/konchubiotec.90.3_195

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Summary:カイコ受精卵の超低温保存法は複数の研究者により検討されてきたが,正常な個体は得られていない。超低温保存を行うにあたり,卵殻透過処理を行った卵では凍結保護剤が卵内に浸透していないのではないか,という可能性がある。そこで外来物質を卵内に浸透させることができるかどうかの証拠を得るため実験を行った。卵殻を通して外来物質の卵内への透過性を高める目的で,次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた卵殻透過処理法の有効性を検討した。まず,2.5%次亜塩素酸ナトリウム+1% Tween 80水溶液を用いた透過処理の時間が卵の孵化率に及ぼす影響を調査した。その結果,処理時間が5分を超えると孵化率が低下し,6分では著しく低下することを確認した。次に,前述の水溶液を用いて5分,10分の条件で透過処理を行った卵に対する外来物質の透過性の有無を,蛍光色素であるローダミンBを用いて調査した。その結果,透過処理を行うことで卵内へ蛍光色素が透過していることを確認した。また,走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)を用いた卵殻表面の観察を行ったところ,5分以上の透過処理を行った場合に卵殻表面に変化が生じていることを明らかにした。これらのことからNaOCl+Tween 80水溶液5分の処理により外来物質を卵内に導入できることが証明された。超低温保存を改良するには,実験条件を見直す必要がある。当処理は超低温保存のみならず生理活性物質等を卵内に作用させる実験にも応用可能であると考えられる。
Bibliography:940855
ZZ20023854
ISSN:1881-0551
1884-7943
DOI:10.11416/konchubiotec.90.3_195