六条潟におけるアサリRuditapes philippinarumの秋季減耗要因について

愛知県六条潟では毎年大量のアサリ稚貝が発生するが,秋季から冬季に減耗し,その原因は明らかでない.そこで3年間の春季から冬季の調査により減耗時期を特定するとともにステンレスかごを用いた野外実験を行った.また,アサリの成長,肥満度および成熟度の生理状態をモニタリングした.いずれの年も10–11月に個体数が1/10以下に減耗した.野外実験では試験区のかごの中でへい死が見られ,かごを被覆しなかった対照区と同様に個体数が減少したため波浪による散逸やカモ類・大型巻貝等による摂食圧が主な要因とは考えられなかった.一方,群成熟度は10–11月に高まり,その後低下する際に個体数が急減しており,成熟・産卵放精と減...

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Published in水産海洋研究 Vol. 83; no. 4; pp. 252 - 259
Main Authors 曽根, 亮太, 和久, 光靖, 石田, 俊朗, 宮脇, 大, 山田, 智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 水産海洋学会 25.11.2019
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Summary:愛知県六条潟では毎年大量のアサリ稚貝が発生するが,秋季から冬季に減耗し,その原因は明らかでない.そこで3年間の春季から冬季の調査により減耗時期を特定するとともにステンレスかごを用いた野外実験を行った.また,アサリの成長,肥満度および成熟度の生理状態をモニタリングした.いずれの年も10–11月に個体数が1/10以下に減耗した.野外実験では試験区のかごの中でへい死が見られ,かごを被覆しなかった対照区と同様に個体数が減少したため波浪による散逸やカモ類・大型巻貝等による摂食圧が主な要因とは考えられなかった.一方,群成熟度は10–11月に高まり,その後低下する際に個体数が急減しており,成熟・産卵放精と減耗との関連が考えられた.六条潟では7–8月頃から群成長が停滞し,夏季以降は十分な栄養状態でないと考えられた.このような低栄養状態にもかかわらず,成熟が進行し,秋季の産卵放精によるエネルギー消費が大量へい死の原因と考えられた.
Bibliography:ZZ20015015
930406
ISSN:0916-1562
2435-2888
DOI:10.34423/jsfo.83.4_252