ミツバチの代替ポリネーターとしてのヒロズキンバエの利用

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.た...

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Published inEngeigaku kenkyuu Vol. 15; no. 2; pp. 161 - 169
Main Authors 後藤, 丹十郎, 吉田, 裕一, 佐藤, 卓也, 田中, 義行, 花田, 惇史, 安場, 健一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 園芸学会 2016
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ISSN1347-2658
1880-3571
DOI10.2503/hrj.15.161

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Summary:近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
Bibliography:ZZ20004168
902239
ISSN:1347-2658
1880-3571
DOI:10.2503/hrj.15.161