人為的な窒素負荷が冷温帯林の土壌呼吸に及ぼす影響

近年、酸性雨研究において問題となっている窒素沈着量の増加について、土壌圏への直接的および間接的影響を検討するため、人為的に窒素負荷量を増加させて、土壌呼吸速度に対する影響を調査した。窒素負荷実験区として広葉樹ササ有り区、広葉樹ササ無し区、針葉樹区の3サイトを設置した。それぞれの実験区において、窒素負荷量を0 kg N ha-1 yr-1、20 kg N ha-1 yr-1、40 kg N ha-1 yr-1 とした処理区を設けた。窒素負荷は1999年より3年間行い、土壌呼吸速度は2000年と2001年に測定した。その結果、窒素負荷の強弱に関わらず、2年間とも土壌呼吸速度は明瞭な季節変化を示した...

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Published inJournal of the Japanese Agricultural Systems Society Vol. 20; no. 2; pp. 176 - 184
Main Authors 小泉, 博, 戸田, 任重, 稲冨, 素子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published システム農学会 01.10.2004
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ISSN0913-7548
2189-0560
DOI10.14962/jass.20.2_176

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Summary:近年、酸性雨研究において問題となっている窒素沈着量の増加について、土壌圏への直接的および間接的影響を検討するため、人為的に窒素負荷量を増加させて、土壌呼吸速度に対する影響を調査した。窒素負荷実験区として広葉樹ササ有り区、広葉樹ササ無し区、針葉樹区の3サイトを設置した。それぞれの実験区において、窒素負荷量を0 kg N ha-1 yr-1、20 kg N ha-1 yr-1、40 kg N ha-1 yr-1 とした処理区を設けた。窒素負荷は1999年より3年間行い、土壌呼吸速度は2000年と2001年に測定した。その結果、窒素負荷の強弱に関わらず、2年間とも土壌呼吸速度は明瞭な季節変化を示した。また、2000年の土壌呼吸速度はすべての実験区において0 kg区よりも20 kg区のほうが高い値を示した。しかし2001年になると針葉樹区の土壌呼吸速度のみがこの傾向を示し、広葉樹両区では20 kg 区よりも0 kg区のほうが高い土壌呼吸速度を示した。各処理区における土壌呼吸速度の温度-呼吸曲線を作成し、回帰式の傾きを比較することにより、各実験区・処理区の土壌呼吸に対する温度依存性を検討した。すべての実験区において20 kg区の傾きが最も大きな値を示し、0kg区が最も小さな値を示した。このことは窒素負荷処理により、土壌呼吸速度の温度依存性が強まることを示唆している。また、将来の地球環境問題として懸念されている地球温暖化(気温の上昇)と窒素沈着量の増加を考慮した場合の、各実験区の土壌からの二酸化炭素放出量の違いについて予測を試みた。その結果、地温が現状よりも3℃上昇すると、二酸化炭素放出量は33%~47%の増加の可能性があることが示唆された。また、温暖化の影響は植生や窒素負荷量の違いにより異なることも予測された。
Bibliography:ZZ00011894
701227
ISSN:0913-7548
2189-0560
DOI:10.14962/jass.20.2_176