カキ‘西条’の発芽不良とその発生機構

カキ早生系‘西条’の発芽不良について島根県内カキ農家にアンケートによる実態調査を行った結果,1995年から急増し,6割以上の園で発芽不良が発生していた.発芽不良樹の結果母枝内では,Ca,Mg,Mn,ブドウ糖および果糖が健全樹より低かった.腋芽の縦断面に0.1%塩化鉄(III)液処理してタンニンの発色程度を比較したところ,発芽不良程度が強くなるにしたがって増加する傾向が認められ,特に3月の芽で顕著であった.発芽不良樹における芽の茎頂ドーム基部の通導組織を含む細胞内に多量のタンニン集積が確認された.また,発芽不良樹は,休眠枝の形成層の耐寒性が低下していることが分かった. 以上のことから,早生系‘西...

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Published inEngeigaku kenkyuu Vol. 5; no. 2; pp. 129 - 133
Main Authors 松本, 敏一, 倉橋, 孝夫, 柳川, 敏治, 尾山, 圭二, 牧, 慎也, 松本, 真悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 園芸学会 2006
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Summary:カキ早生系‘西条’の発芽不良について島根県内カキ農家にアンケートによる実態調査を行った結果,1995年から急増し,6割以上の園で発芽不良が発生していた.発芽不良樹の結果母枝内では,Ca,Mg,Mn,ブドウ糖および果糖が健全樹より低かった.腋芽の縦断面に0.1%塩化鉄(III)液処理してタンニンの発色程度を比較したところ,発芽不良程度が強くなるにしたがって増加する傾向が認められ,特に3月の芽で顕著であった.発芽不良樹における芽の茎頂ドーム基部の通導組織を含む細胞内に多量のタンニン集積が確認された.また,発芽不良樹は,休眠枝の形成層の耐寒性が低下していることが分かった. 以上のことから,早生系‘西条’では休眠芽でタンニンが生理的な要因で不溶化して通導組織に沈着し,芽への養分供給が阻害されることにより発芽不良が発生すると考えられた.また,冬の低温でその症状がさらに助長されることも示唆された.
Bibliography:ZZ20004168
731068
ISSN:1347-2658
1880-3571
DOI:10.2503/hrj.5.129