ホオジロの社会構造と繁殖番い数の安定性
1.1969~1975年に,長野県千曲川の河川敷で,ホオジロの個体間の社会関係と個体の空間的時間的分散様式を,すべての季節にわたって調査し,その社会構造を明らかにした。 2.番いの雌雄には,年間を通じて頻繁な連れ立ち行動がみられ,これが本種の番い維持に大きな役割を果しているものと想定された。1番いは1繁殖期に平均3.0回営巣し,一腹産卵数は平均4.0卵,産卵数に対する巣立率は平均23.0%であった。 3.繁殖期には,雌の行動圏(平均14,580m2)は番い相手の雄(平均19,150m2)にほぼ完全に含まれていた。1繁殖期内では雄は行動圏を移動しないが雌の1/3は,雌が消失した隣接行動圏へ移動し...
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Published in | Yamashina Chōrui Kenkyūjo kenkyū hōkoku Vol. 10; no. 3; pp. 199 - 299_4 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 山階鳥類研究所
01.09.1978
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ISSN | 0044-0183 1883-3659 |
DOI | 10.3312/jyio1952.10.199 |
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Summary: | 1.1969~1975年に,長野県千曲川の河川敷で,ホオジロの個体間の社会関係と個体の空間的時間的分散様式を,すべての季節にわたって調査し,その社会構造を明らかにした。 2.番いの雌雄には,年間を通じて頻繁な連れ立ち行動がみられ,これが本種の番い維持に大きな役割を果しているものと想定された。1番いは1繁殖期に平均3.0回営巣し,一腹産卵数は平均4.0卵,産卵数に対する巣立率は平均23.0%であった。 3.繁殖期には,雌の行動圏(平均14,580m2)は番い相手の雄(平均19,150m2)にほぼ完全に含まれていた。1繁殖期内では雄は行動圏を移動しないが雌の1/3は,雌が消失した隣接行動圏へ移動し,番いの組みかえが起こった。 4.非繁殖期にも,定住個体は繁殖期とほぼ同一の行動圏へ番いで留まり続けるが,土地をもたない余剰個体がその中に多数存在し,これら未定着個体は未定着状態を続ける限り定住個体に土地の利用を許容されていた。 5.8類型の発声を区別でき,それを発する主体および状況について述べた。特に囀りは,それが発せられる時期によってそれぞれ春•繁殖期•秋の囀りを区別できた。囀りの頻度は一般に独身の方が配偶個体より,新定着個体の方が定住個体よりも高かった。囀りの姿勢は独身と配偶で異なった。 6.ソングポストの最外郭を結んで得られるソングエリアは,隣接個体同士ではほとんど重複しなかった。また隣接個体のソングエリアヘは互いに侵入し合うことも少なかった。 7.攻撃的行動は,威嚇•対峙•追いかけ•身体的闘争の4類型に区別でき,身体的闘争は地上での取っ組み合いと空中闘争に分けられた。争いは1年を通じて1時間に1回内外生起しただけであるが,争いによって他個体を排除する範囲(なわばり)は,ほぼソングエリアと一致していた。このことから,ソングエリアは囀りによって主張されるなわばりであり,その範囲を隣接個体は互いに認識して,避け合っているのであろうと結論した。 8.好適な生息場所は,ほぼ定住番いのなわばりによってモザイク状におおわれているので,若鳥は通常は同性の定住個体が消失した跡地へ定着した。それ以外の若鳥は,定住および新定着雄の秋のなわばり性によって排除されるものと想定された。 9.以上をもとに,小地域的な個体群密度を一定に保つためのなわばりの意義を考察し,スズメ目小鳥類の個体群密度の自己調節について若干論議した。 |
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Bibliography: | 194943 ZZ00007634 |
ISSN: | 0044-0183 1883-3659 |
DOI: | 10.3312/jyio1952.10.199 |