高レベル放射性廃棄物処分場立地の受容に関する心理的要因の検討 福島第一原子力発電事故前データの分析と考察

現行の行政法では高レベル放射性廃棄物(HLW)処分場は,国内候補地を1つ選定する予定だが,候補地選定問題は一向に進展していない。本研究の目的は,HLW処分場立地の受け入れ態度の規定因を検討することである。社会的受容やリスク研究における先行研究を参照し,信頼,リスク認知,ベネフィット認知といった要因がそれぞれHLW処分場立地の受け入れ態度に及ぼす効果を計量的に検討した。さらに,それぞれの効果が原発既設置地域・非設置地域の違いによりどのように異なっているのか検討した。具体的には,以下の4つの仮説を検討した。 仮説1:HLW処分場立地の受容に,リスク認知は負の効果,ベネフィット認知,行政への信頼は正...

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Published in環境科学会誌 Vol. 26; no. 5; pp. 413 - 420
Main Authors 高浦, 佑介, 高木, 大資, 池田, 謙一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 2013
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Summary:現行の行政法では高レベル放射性廃棄物(HLW)処分場は,国内候補地を1つ選定する予定だが,候補地選定問題は一向に進展していない。本研究の目的は,HLW処分場立地の受け入れ態度の規定因を検討することである。社会的受容やリスク研究における先行研究を参照し,信頼,リスク認知,ベネフィット認知といった要因がそれぞれHLW処分場立地の受け入れ態度に及ぼす効果を計量的に検討した。さらに,それぞれの効果が原発既設置地域・非設置地域の違いによりどのように異なっているのか検討した。具体的には,以下の4つの仮説を検討した。 仮説1:HLW処分場立地の受容に,リスク認知は負の効果,ベネフィット認知,行政への信頼は正の効果を及ぼす 仮説2:行政への信頼はリスク認知に負の効果を及ぼす 仮説3:原子力発電施設既設置地域の回答者は,非設置地域の回答者と比べて,原子力問題への関心が高い 仮説4:原子力発電施設既設置地域の回答者は,非設置地域の回答者と比べて,HLW処分場立地の受容にリスク認知・ベネフィット認知の効果が大きく,信頼の効果が小さい 2011年2月23日~3月8日にかけて全国の20~69歳の男女を対象としたオンライン調査を行った(N=1120,既設置地域,非設置地域の回答者数はそれぞれ560)。多変量解析による分析の結果,HLW処分場立地の受容の規定因として,リスク認知の負の効果,ベネフィット認知,行政への信頼の正の効果が示された(仮説1支持)。加えて,行政への信頼はリスク認知に負の効果を示すことも確認された(仮説2支持)。また,原子力発電施設の既設置地域と非設置地域の回答データを比較した結果,既設置地域のほうが,非設置地域よりも原子力発電への関心が高く,リスク認知の及ぼす効果が大きいことが示されたが,ベネフィット認知,信頼の効果に有意な差は見られなかった(仮説3支持,仮説4部分支持)。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.26.413