淡水養殖ギンザケのヘルペスウイルス感染例

1987年の9月から11月にかけて, 東北地方のギンザケ淡水養殖場において発生した異常斃死例につき, 状況調査および病性鑑定を実施したところ, 以下のことが判明した。 1) 9月中旬 (水温14~15℃) から11月下旬 (水温9~10℃) までの累積斃死率は5.6%で, 斃死のピークは10月上・中旬 (水温12℃前後) であった。 2) 病魚に共通する外観所見は各鰭の欠損であり, 解剖所見としては肝の白斑形成が特徴的であった。 3) 寄生虫は検出できなかったが, 供試病魚 (7尾) には例外なくF.columnarisの皮膚感染が, 1尾にはR.salmoninarumの感染が認められた。血...

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Published inSuisan Zoshoku Vol. 36; no. 4; pp. 297 - 305
Main Authors 西村, 伸一郎, 宮澤, 真紀, 飯田, 九州男, 中田, 実, 堀内, 三津幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本水産増殖学会 1989
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ISSN0371-4217
2185-0194
DOI10.11233/aquaculturesci1953.36.297

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Summary:1987年の9月から11月にかけて, 東北地方のギンザケ淡水養殖場において発生した異常斃死例につき, 状況調査および病性鑑定を実施したところ, 以下のことが判明した。 1) 9月中旬 (水温14~15℃) から11月下旬 (水温9~10℃) までの累積斃死率は5.6%で, 斃死のピークは10月上・中旬 (水温12℃前後) であった。 2) 病魚に共通する外観所見は各鰭の欠損であり, 解剖所見としては肝の白斑形成が特徴的であった。 3) 寄生虫は検出できなかったが, 供試病魚 (7尾) には例外なくF.columnarisの皮膚感染が, 1尾にはR.salmoninarumの感染が認められた。血液寒天培地による内臓諸器官の細菌分離成績はすべて陰性であった。 4) 病理組織学的な特徴病変は, 肝の巣状壊死と脾のリンパ組織減少および壊死であった。 5) RTG-2細胞を用いて病魚よりウイルス分離を試みたところ, 多核巨細胞 (合胞体) 形成を特徴的なCPEとするウイルスが分離された。 6) 本ウイルスはその物理化学的性状および形態学的性状からヘルペスウイルス群に同定された。本ウイルスは抗OMV血清で中和されるが抗H.salmonis血清では中和されないことからSalmonid herpesvirus2に属し, 本邦で既報のヘルペスウイルス (OMV, NeVTAおよびYTV) と近縁と考えられた。 7) しかし, これらのウイルスとは粒子サイズが一致せず, またNeVTAおよびYTVとは異なり培養細胞に封入体を形成しないので, 本報ではギンザケ由来のヘルペスウイルスOK株として報告した。 8) 以上の検討結果から, 本症例の斃死原因はヘルペスウイルス病, カラムナリス病および細菌性腎臓病と推察された。
Bibliography:ZZ00008678
421302
ISSN:0371-4217
2185-0194
DOI:10.11233/aquaculturesci1953.36.297