カイコの胚脱皮に関する形態学的観察

カイコの胚発育の過程を光学顕微鏡および電子顕微鏡によって観察し, 胚脱皮について形態学的な検討を行った。胚脱皮の過程ならびに胚から離脱する膜の微細構造について得られた結果は次のようであった。 胚が上唇突起発生期に達すると, 外胚葉組織の外側に膜状の構造が現われ, これは短縮期になると胚から離れた1枚の膜として識別できるようになった。頭胸分節期には, 新しい第2の膜が胚の外側に認められ, この膜は反転期に胚から離れ, 第1の膜に接するようになった。胚が剛毛発生期に達したときにも胚を包む2枚の膜が観察された。また2枚の膜はいずれも幼虫のクチクルあるいはエピクチクルにおけるような微細構造は示さず,...

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Published inNihon sanshigaku zasshi Vol. 45; no. 3; pp. 225 - 231
Main Authors 北沢, 敏男, 神田, 俊男, 森, 精, 大槻, 良樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本蚕糸学会 01.06.1976
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ISSN0037-2455
1884-796X
DOI10.11416/kontyushigen1930.45.225

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Summary:カイコの胚発育の過程を光学顕微鏡および電子顕微鏡によって観察し, 胚脱皮について形態学的な検討を行った。胚脱皮の過程ならびに胚から離脱する膜の微細構造について得られた結果は次のようであった。 胚が上唇突起発生期に達すると, 外胚葉組織の外側に膜状の構造が現われ, これは短縮期になると胚から離れた1枚の膜として識別できるようになった。頭胸分節期には, 新しい第2の膜が胚の外側に認められ, この膜は反転期に胚から離れ, 第1の膜に接するようになった。胚が剛毛発生期に達したときにも胚を包む2枚の膜が観察された。また2枚の膜はいずれも幼虫のクチクルあるいはエピクチクルにおけるような微細構造は示さず, 一種の限界膜様の構造であった。また膜の電子顕微鏡像では, 第1の膜に比へて第2の膜の電子密度が高いことを除くと両者の間の差異は明らかでなかった。膜の厚さは部位による多少の差はあるがともに約200Åであった。 胚脱皮と幼虫脱皮あるいはカイコ以外の昆虫の胚脱皮とを比較し, その相違点からカイコにおける胚脱皮の特異性について考察した。
Bibliography:ZZ00018606
132060
ISSN:0037-2455
1884-796X
DOI:10.11416/kontyushigen1930.45.225