下痢性および麻痺性ホタテガイ貝毒の微生物的定量

麻痺性貝毒あるいは下痢性貝毒によって毒化したホタテガイの中腸腺抽出液によって増殖を阻害される2種類のBacillus属細菌を土壌から分離し,前者をBacillus OH-P株,また後者をBacillus OH-D株としてこれらを被検細菌とする貝毒の微生物的貝毒定量について試みた. (1) Bacillus OH-P株あるいはB. OH-D株の液体培地に麻痺性貝毒例としてのサキシトキシン,あるいは下痢性貝毒例としてのオカダ酸を添加すると,それぞれの貝毒濃度に比例しておのおのの被検細菌の増殖が阻害された.とくにB. OH-P株においては,この菌株を固形培地に接種した後サキシトキシンを試料液とするカ...

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Published inNippon nōgei kagakukaishi Vol. 65; no. 12; pp. 1753 - 1760
Main Authors 菊池, 慎太郎, 安居, 光国, 大島, 由子, 安住, 尚也, 竹内, 正樹, 大嶋, 尚士, 竹内, 隆男, 紀藤, 恭輔, 山田, 茂則, 三浦, 敏明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本農芸化学会 01.12.1991
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Summary:麻痺性貝毒あるいは下痢性貝毒によって毒化したホタテガイの中腸腺抽出液によって増殖を阻害される2種類のBacillus属細菌を土壌から分離し,前者をBacillus OH-P株,また後者をBacillus OH-D株としてこれらを被検細菌とする貝毒の微生物的貝毒定量について試みた. (1) Bacillus OH-P株あるいはB. OH-D株の液体培地に麻痺性貝毒例としてのサキシトキシン,あるいは下痢性貝毒例としてのオカダ酸を添加すると,それぞれの貝毒濃度に比例しておのおのの被検細菌の増殖が阻害された.とくにB. OH-P株においては,この菌株を固形培地に接種した後サキシトキシンを試料液とするカップ法を適用するとカップの周囲に増殖阻止円が観察され,その直径はカップ内に注入したサキシトキシン濃度に比例するものであった. (2) ホタテガイ中腸腺から調製した麻痺性貝毒画分あるいは下痢性貝毒画分を液体培地に添加するとB. OH-P株あるいはB. OH-D株の増殖はそれぞれ添加した貝毒量(マウス致死法で測定)に比例して阻害され,また前者の菌株にカップ法を適用するとサキシトキシンの場合と同様にカップの周囲に阻止円が形成された.さらに,貝毒粗画分および部分精製画分のいずれを用いた場合にも同程度の増殖阻害効果が認められ,あるいはホタテガイ中腸腺に著量存在する不飽和脂肪酸を培養系に添加しても被検菌の増殖に変化が見られなかったことから,被検菌増殖阻害効果は貝毒に特異的なものであり,中腸腺に存在する夾雑物質によっては影響されないと推定された. (3) 中腸腺,生殖腺,鰓部および可食部の抽出液による被検菌の増殖阻害効果について検討したところ被検菌の増殖はこの順で阻害され,マウス致死法および酵素標識抗体法によって測定した結果に一致した. 以上の結果から,マウスを被検動物とする従来法に代えて微生物を用いる貝毒定量の可能性が示唆された.
Bibliography:ZZ00014810
441434
ISSN:0002-1407
1883-6844
DOI:10.1271/nogeikagaku1924.65.1753