豚の下痢便から分離されたパルボウイルスの性状

1985年,2月,某大規模養豚場に発生した下痢症例において,繁殖母豚の下痢便より豚甲状腺初代培養細胞に円形化細胞変性を示す因子が分離された.分離ウイルスはIUdR存在下でその増殖が阻害され,エーテル,熱,酸の各処理に抵抗性を示した.感染培養液中には電顕により27nmの粒子が認められ,塩化セシウム密度勾配による浮上密度は1.40g/mlであった.SDS-PAGEにより,ウイルス蛋白は分子量81k,70k,66k及び62kダルトンの4種類のバンドに分かれた.また,赤血球凝集性はモルモット,マウス,ヒトO型の各赤血球で認められた.一方,既知の豚パルボウイルス(PPV)との交差中和試験では,分離ウイル...

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Published inJapanese journal of veterinary science Vol. 51; no. 2; pp. 337 - 344
Main Authors 安原, 寿雄, 松井, 修, 平原, 正, 扇谷, 年昭, 田中, 雅之, 児玉, 和夫, 中井, 正久, 佐々木, 文存
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本獣医学会 15.04.1989
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Summary:1985年,2月,某大規模養豚場に発生した下痢症例において,繁殖母豚の下痢便より豚甲状腺初代培養細胞に円形化細胞変性を示す因子が分離された.分離ウイルスはIUdR存在下でその増殖が阻害され,エーテル,熱,酸の各処理に抵抗性を示した.感染培養液中には電顕により27nmの粒子が認められ,塩化セシウム密度勾配による浮上密度は1.40g/mlであった.SDS-PAGEにより,ウイルス蛋白は分子量81k,70k,66k及び62kダルトンの4種類のバンドに分かれた.また,赤血球凝集性はモルモット,マウス,ヒトO型の各赤血球で認められた.一方,既知の豚パルボウイルス(PPV)との交差中和試験では,分離ウイルスの抗原性は血清学的にPPVとは明らかな差異が認められたが,以上の成績から,分離ウイルスはパルボウイルスに属すると考えられた.抗体調査から,この分離ウイルスはわが国の豚の間に広く存在することが示唆された.
Bibliography:ZZ00004647
430272
ISSN:0021-5295
1881-1442
DOI:10.1292/jvms1939.51.337