中国江蘇省における農地の流動化 土地株式合作制度による取引費用の節減

中国における農地貸借市場の発展は,農業労働力の農外への流出によって,その端緒が開かれ,農地制度改革,とりわけ請負経営権の強化がそれを後押ししてきた.本稿ではこうした先行研究の主張を支持しながらも,農地の流動化を促す第3の要因として,貸借を仲介する組織の役割に注目した.実証分析の結果は,土地株式合作社が農地の流動化とその集積および農家以外の経営体の農業参入に,多大な貢献をていることを示唆している.合作社が貸借を仲介することで取引費用が節減され,流動化が急速に進行したのである.これは集団的土地所有という社会主義の遺制を実質的に無効にする制度の導入により,農民が躊躇なく利用権を譲渡する条件が整った結...

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Published inNōgyō keizai kenkyu Vol. 85; no. 4; pp. 205 - 219
Main Authors 包, 宗順, 倪, 鏡, 伊藤, 順一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農業経済学会 25.03.2014
Subjects
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ISSN0387-3234
2188-1057
DOI10.11472/nokei.85.205

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Summary:中国における農地貸借市場の発展は,農業労働力の農外への流出によって,その端緒が開かれ,農地制度改革,とりわけ請負経営権の強化がそれを後押ししてきた.本稿ではこうした先行研究の主張を支持しながらも,農地の流動化を促す第3の要因として,貸借を仲介する組織の役割に注目した.実証分析の結果は,土地株式合作社が農地の流動化とその集積および農家以外の経営体の農業参入に,多大な貢献をていることを示唆している.合作社が貸借を仲介することで取引費用が節減され,流動化が急速に進行したのである.これは集団的土地所有という社会主義の遺制を実質的に無効にする制度の導入により,農民が躊躇なく利用権を譲渡する条件が整った結果にほかならない.
Bibliography:872245
ZZ00015633
ISSN:0387-3234
2188-1057
DOI:10.11472/nokei.85.205