リンゴ新品種‘もりのかがやき’
1. ‘もりのかがやき’は,農林水産省果樹試験場盛岡支場(現農研機構果樹研究所リンゴ研究拠点)において,1981年に‘つがる’に‘ガラ’を交雑して得た実生から選抜された,果皮が黄色く大果の良食味リンゴ品種である。2002年から「リンゴ盛岡63号」の系統名を付けてリンゴ第5回系統適応性検定試験に追加系統として供試し,13道県17カ所の公立試験研究機関,北海道農業研究センターと果樹研究所リンゴ研究拠点において特性を検討した。2010年3月に特性の優れる品種として農林水産省の農林認定品種とされ,2011年3月に登録番号第20709号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹姿は開張性で,樹勢は中程...
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Published in | Kaju Kenkyuujo kenkyuu houkoku no. 21; pp. 11 - 29 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
20.03.2016
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ISSN | 1347-3549 |
DOI | 10.24514/00002032 |
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Summary: | 1. ‘もりのかがやき’は,農林水産省果樹試験場盛岡支場(現農研機構果樹研究所リンゴ研究拠点)において,1981年に‘つがる’に‘ガラ’を交雑して得た実生から選抜された,果皮が黄色く大果の良食味リンゴ品種である。2002年から「リンゴ盛岡63号」の系統名を付けてリンゴ第5回系統適応性検定試験に追加系統として供試し,13道県17カ所の公立試験研究機関,北海道農業研究センターと果樹研究所リンゴ研究拠点において特性を検討した。2010年3月に特性の優れる品種として農林水産省の農林認定品種とされ,2011年3月に登録番号第20709号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹姿は開張性で,樹勢は中程度である。‘もりのかがやき’のS遺伝子型はS5S7であり,S遺伝子型が同じ‘さんさ’とは交雑不和合性であるが,‘ふじ’,‘つがる’等の主要経済品種とは和合性である。3. 系統適応性検定試験における短果枝の着生性と腋花芽の着生性はいずれも中程度である。発芽日は‘ふじ’より3日,満開日は‘ふじ’より1日それぞれ早かった。4. 果実の収穫盛期は東北地方と北海道では10月上旬~下旬,関東地方北部や長野県では9月下旬~10月中旬であり,‘ふじ’より30日以上早かった。生産力は比較的高い。果実重は382gであり,‘ふじ’より40g以上大きかった。果梗基部にさびが発生しやすいが,発生程度は比較的少なかった。心かびの発生量は‘ふじ’と同程度に低かった。肉質は中程度で,果汁は比較的多かった。糖度は平均14.0%程度であり,‘ふじ’より1%程度低かったが,果樹研究所における特性調査では‘ふじ’および‘ジョナゴールド’と同等の高さであった。酸度は平均0.29g/100mlであり,‘ふじ’より0.1g/100ml程度低かった。甘味比は平均49.8であり,‘ふじ’より10以上高く,甘味が強く感じられる食味特性を有していた。5. 病害抵抗性に関する特性検定試験結果から,‘もりのかがやき’は‘スターキングデリシャス’よりも斑点落葉病に対する抵抗性程度が明らかに高いと判定され,‘ふじ’と同程度ないし抵抗性程度がやや高いと考えられた。黒星病に対しては,‘もりのかがやき’は‘ふじ’や‘つがる’と同じく罹病性であると判定された。6. ‘もりのかがやき’は北海道,東北地方や関東地方北部,長野県,北陸地方など既存のリンゴ栽培地域で栽培できる。東北地方北部などの寒冷地においても果実特性を十分に発揮できる。系統適応性検定試験では,栽培地域,年次によって果肉の褐変症状が認められているので,本品種を試作した場合に果肉褐変症状の発生程度が著しい地域では導入を控える。年次によって収穫前落果が発生するため,収穫前落果が発生しやすい地域では落果防止剤を使用する。裂果の発生が認められるので,適切な肥培管理に努めて,過度な大果生産を行わない。 |
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Bibliography: | 902077 ZZ20011205 |
ISSN: | 1347-3549 |
DOI: | 10.24514/00002032 |