8. 肥満関連腎症の1例

【症例】14歳の女児. 【家族歴】父が肥満と高血圧あり. 【現病歴】小学校1年生時に60kgあり, 中学校3年生から肥満治療目的に近医でフォローされるも体重の改善なし. 学校検尿で蛋白尿3+を指摘されたため, 肥満治療と蛋白尿の精査のため入院となった. 【身体所見】身長156.6cm(-0.1SD), 体重85.5kg(+5.6SD), BMI34.9, 血圧140/74mmHg. 【検査所見 尿所見】蓄尿蛋白尿2.0g/日, 蛋白定性2+. 沈渣RBC1~4/HPF, 硝子円柱1~4/HPF, 上皮円柱1~4/W, 卵円形脂肪体あり. S.I. 0.26. 血液所見:TP7.4g/dl, A...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 23; no. 1; p. 69
Main Authors 花田卓也, 河場康郎, 岡田晋一, 鞍嶋有紀, 長石純一, 神崎晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 2010
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Summary:【症例】14歳の女児. 【家族歴】父が肥満と高血圧あり. 【現病歴】小学校1年生時に60kgあり, 中学校3年生から肥満治療目的に近医でフォローされるも体重の改善なし. 学校検尿で蛋白尿3+を指摘されたため, 肥満治療と蛋白尿の精査のため入院となった. 【身体所見】身長156.6cm(-0.1SD), 体重85.5kg(+5.6SD), BMI34.9, 血圧140/74mmHg. 【検査所見 尿所見】蓄尿蛋白尿2.0g/日, 蛋白定性2+. 沈渣RBC1~4/HPF, 硝子円柱1~4/HPF, 上皮円柱1~4/W, 卵円形脂肪体あり. S.I. 0.26. 血液所見:TP7.4g/dl, Alb4.4g/dl, T.chol169mg/dl, BUN11mg/dl, Cr0.59mg/dl, 低補体血症なし, 免疫グロブリン, ASO, 抗核抗体など異常なし. 【腎生検組織所見】光顕所見は, 多くの糸球体が肥大しており, 一部にはglobal sclerosisに陥った糸球体が見出された. また, 尿細管間質の変化も存在した. 蛍光抗体法はすべて陰性だった. 糸球体肥大と二次性FSGS様病変があり, 肥満関連腎症と診断した. 薬物療法としてACEiとARBを開始し, 食事療法や運動療法など肥満のコントロールを行っている. 肥満関連腎症は全身性障害を伴わない著しい肥満において, ネフローゼ症候群に匹敵する蛋白尿を示す病態と定義され, 糸球体高血圧や糸球体血流量の増加から過剰濾過を生じていると推測されている. 二次性FSGSの原因の一つにあげられており, 特発性FSGSより予後は悪くないとされているが, 本症例のように光顕所見でglobal sclerosisに陥った糸球体が存在し, 予後が懸念される症例もあり, 慎重な経過観察が必要であると考えられた.
ISSN:0915-2245