9.噴門癌狭窄に試みた胃瘻の一例

噴門癌は胃瘻の適応疾患の一つであるが, 時期を逸すると造設が困難である. 本症例はそうした一例である. 82歳男性2年前に噴門癌と診断され病名告知するも手術を希望せず放置する. その後胃部不快感が出現し再受診した. 当初ファィバースコープが狭窄部を通過出来たので内視鏡下胃瘻造設(PEG)を試みたが, 胃の伸展性不良にてカテラン針でも胃内に到達出来ずPEGを断念した. しかしながら胃内視鏡フィルムと腹部CT画像とを再検討したところ幽門部胃壁には癌は伸展しておらず, 穿刺ルートを肝臓経由で行えば到達出来ることが判った. 本島総合病院に転院し実施した胃痩造設は通常の手順とは異なった方法を実施した....

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 52; no. 2; pp. 170 - 171
Main Authors 後藤與四之, 後藤勝子, 中繁玲子, 下山寿美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2002
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Abstract 噴門癌は胃瘻の適応疾患の一つであるが, 時期を逸すると造設が困難である. 本症例はそうした一例である. 82歳男性2年前に噴門癌と診断され病名告知するも手術を希望せず放置する. その後胃部不快感が出現し再受診した. 当初ファィバースコープが狭窄部を通過出来たので内視鏡下胃瘻造設(PEG)を試みたが, 胃の伸展性不良にてカテラン針でも胃内に到達出来ずPEGを断念した. しかしながら胃内視鏡フィルムと腹部CT画像とを再検討したところ幽門部胃壁には癌は伸展しておらず, 穿刺ルートを肝臓経由で行えば到達出来ることが判った. 本島総合病院に転院し実施した胃痩造設は通常の手順とは異なった方法を実施した. まずCTの透視と言えるcT-floloscopy下に幽門部内腔に17G針を穿刺し, ガイドワイヤーを胃内に約20cm挿入しこれをCT画像で確認した. それ以後は通常のPEG造設同様に内視鏡を挿入しpull through法で実施した. さらに本症例では5日後に胃瘻チューブの中に12Frのカテーテルを通し先端は空腸内に留置した. そして栄養剤をポンプで注入した. 3週間後の退院時には腸管栄養は夜間のみポンプ注入し, 日中はあらゆるチューブを接続せず自由に行動させた. 退院後の1ヶ月間は自宅で畑仕事も出来たが, 次第に空腸チューブの通過が不良となり2ヶ月後には1泊入院で空腸チューブを透視下で入れ替えた. その後の2週間は衰弱が激しく寝たきりとなり吐血し再入院する. 胃瘻造設後96日後に死亡した. 本症例は在宅末期癌の患者が経口摂取不能となった場合の栄養管理だけでなく, モルヒネ投与ルートを確保する目的を想定して胃瘻を造設したが, さいわい痛みの愁訴はなかったのでモルヒネは使用しなかった. 経口摂取不能となった在宅患者の栄養管理にPEGが優れていることは既に認められているところである. 最近在宅で過ごす末期癌の患者も珍しくない. しかしながら多くはIVH管理である. 本症例は痴呆の夫人と二人だけの生活をしていたが, 就眠中のポンプ注入による胃瘻栄養を行った結果, 日中まったく普通の生活をすることが出来た期間が1ヶ月間あった. 長くは続かない在宅末期でも積極的にPEGを試みる価値を知った症例であった.
AbstractList 噴門癌は胃瘻の適応疾患の一つであるが, 時期を逸すると造設が困難である. 本症例はそうした一例である. 82歳男性2年前に噴門癌と診断され病名告知するも手術を希望せず放置する. その後胃部不快感が出現し再受診した. 当初ファィバースコープが狭窄部を通過出来たので内視鏡下胃瘻造設(PEG)を試みたが, 胃の伸展性不良にてカテラン針でも胃内に到達出来ずPEGを断念した. しかしながら胃内視鏡フィルムと腹部CT画像とを再検討したところ幽門部胃壁には癌は伸展しておらず, 穿刺ルートを肝臓経由で行えば到達出来ることが判った. 本島総合病院に転院し実施した胃痩造設は通常の手順とは異なった方法を実施した. まずCTの透視と言えるcT-floloscopy下に幽門部内腔に17G針を穿刺し, ガイドワイヤーを胃内に約20cm挿入しこれをCT画像で確認した. それ以後は通常のPEG造設同様に内視鏡を挿入しpull through法で実施した. さらに本症例では5日後に胃瘻チューブの中に12Frのカテーテルを通し先端は空腸内に留置した. そして栄養剤をポンプで注入した. 3週間後の退院時には腸管栄養は夜間のみポンプ注入し, 日中はあらゆるチューブを接続せず自由に行動させた. 退院後の1ヶ月間は自宅で畑仕事も出来たが, 次第に空腸チューブの通過が不良となり2ヶ月後には1泊入院で空腸チューブを透視下で入れ替えた. その後の2週間は衰弱が激しく寝たきりとなり吐血し再入院する. 胃瘻造設後96日後に死亡した. 本症例は在宅末期癌の患者が経口摂取不能となった場合の栄養管理だけでなく, モルヒネ投与ルートを確保する目的を想定して胃瘻を造設したが, さいわい痛みの愁訴はなかったのでモルヒネは使用しなかった. 経口摂取不能となった在宅患者の栄養管理にPEGが優れていることは既に認められているところである. 最近在宅で過ごす末期癌の患者も珍しくない. しかしながら多くはIVH管理である. 本症例は痴呆の夫人と二人だけの生活をしていたが, 就眠中のポンプ注入による胃瘻栄養を行った結果, 日中まったく普通の生活をすることが出来た期間が1ヶ月間あった. 長くは続かない在宅末期でも積極的にPEGを試みる価値を知った症例であった.
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