総説特集「ミツバチ産品 : プロポリスの健康機能研究と栄養・食糧学」に寄せて

古来より人類は蜂蜜をはじめとするミツバチの作る恵みを活用してきた. また農産物の受粉についてもミツバチは欠かせない存在である. 近年ではミツバチの不足が懸念され, その原因をはじめとしてミツバチに関する研究が注目されつつある. 蜂蜜や花粉, 蜂の子, ローヤルゼリー, プロポリスなどを総称してミツバチ産品(蜂産品)と呼ぶ. これらは我々の健康機能への関与に加えて, 食品産業においても重要な産物である. これらの中でプロポリスは含有成分としてポリフェノールなどを含む場合も多く, 本学会においてもプロポリスを対象とした研究を目にするようになってきた. プロポリスの健康機能研究は, この10年ほどの...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 77; no. 3; p. 155
Main Author 津田孝範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養・食糧学会 10.06.2024
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Abstract 古来より人類は蜂蜜をはじめとするミツバチの作る恵みを活用してきた. また農産物の受粉についてもミツバチは欠かせない存在である. 近年ではミツバチの不足が懸念され, その原因をはじめとしてミツバチに関する研究が注目されつつある. 蜂蜜や花粉, 蜂の子, ローヤルゼリー, プロポリスなどを総称してミツバチ産品(蜂産品)と呼ぶ. これらは我々の健康機能への関与に加えて, 食品産業においても重要な産物である. これらの中でプロポリスは含有成分としてポリフェノールなどを含む場合も多く, 本学会においてもプロポリスを対象とした研究を目にするようになってきた. プロポリスの健康機能研究は, この10年ほどの間に大きく進展しているが, いまだ発展途上段階であるといえる. 特に研究者の中には, プロポリスはインチキで怪しいもの, 手を出さない方が良いのかも, といった認識もあると思う. これはなぜだろうか. プロポリスは産地や起源植物により含有成分が大きく異なるため, この相違が多くの誤解や異なる研究結果を生む原因となっている. あるプロポリスに含有する成分が別のプロポリスには全く含まれていないことも多い. さらに抽出法によっても抽出物中の構成成分は異なる. この相違は当然ながら生理機能の有無や強弱にも多大な影響を与えることになる. 加えてヒトでの効能効果に関しての研究は十分ではない. このように含有成分の化学的な解明や効能効果の評価が不十分であるにもかかわらず, 製品が先んじて市場に多く出回ってしまったことが一つの原因と考えられる. 本総説特集では, まずプロポリスの基本的なことを解説していただき(熊澤らの稿), つぎにプロポリスの活用には成分の代謝・吸収に関する基本的な知見が必須であるため, この点についての知見をご紹介いただく(室田らの稿). さらにプロポリスの最近の機能研究に関しては, 2つの基盤的な研究 ; 認知機能の予防・治療(稲垣らの稿), 生体イメージングによる可視化解析からのプロポリスと免疫機能(安達の稿)の研究をご紹介いただく. 本特集をきっかけに, 現時点でのプロポリス研究の立ち位置を正しく認識していただいた上で, 本学会に関係する多くの研究者がプロポリスや他のミツバチ産品の研究にも積極的に参画していただくきっかけになれば幸いである.
AbstractList 古来より人類は蜂蜜をはじめとするミツバチの作る恵みを活用してきた. また農産物の受粉についてもミツバチは欠かせない存在である. 近年ではミツバチの不足が懸念され, その原因をはじめとしてミツバチに関する研究が注目されつつある. 蜂蜜や花粉, 蜂の子, ローヤルゼリー, プロポリスなどを総称してミツバチ産品(蜂産品)と呼ぶ. これらは我々の健康機能への関与に加えて, 食品産業においても重要な産物である. これらの中でプロポリスは含有成分としてポリフェノールなどを含む場合も多く, 本学会においてもプロポリスを対象とした研究を目にするようになってきた. プロポリスの健康機能研究は, この10年ほどの間に大きく進展しているが, いまだ発展途上段階であるといえる. 特に研究者の中には, プロポリスはインチキで怪しいもの, 手を出さない方が良いのかも, といった認識もあると思う. これはなぜだろうか. プロポリスは産地や起源植物により含有成分が大きく異なるため, この相違が多くの誤解や異なる研究結果を生む原因となっている. あるプロポリスに含有する成分が別のプロポリスには全く含まれていないことも多い. さらに抽出法によっても抽出物中の構成成分は異なる. この相違は当然ながら生理機能の有無や強弱にも多大な影響を与えることになる. 加えてヒトでの効能効果に関しての研究は十分ではない. このように含有成分の化学的な解明や効能効果の評価が不十分であるにもかかわらず, 製品が先んじて市場に多く出回ってしまったことが一つの原因と考えられる. 本総説特集では, まずプロポリスの基本的なことを解説していただき(熊澤らの稿), つぎにプロポリスの活用には成分の代謝・吸収に関する基本的な知見が必須であるため, この点についての知見をご紹介いただく(室田らの稿). さらにプロポリスの最近の機能研究に関しては, 2つの基盤的な研究 ; 認知機能の予防・治療(稲垣らの稿), 生体イメージングによる可視化解析からのプロポリスと免疫機能(安達の稿)の研究をご紹介いただく. 本特集をきっかけに, 現時点でのプロポリス研究の立ち位置を正しく認識していただいた上で, 本学会に関係する多くの研究者がプロポリスや他のミツバチ産品の研究にも積極的に参画していただくきっかけになれば幸いである.
Author 津田孝範
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