P-17)臀部表皮嚢腫より発生したと思われる有棘細胞癌の1例

目的:今回臀部表皮嚢腫より発生したと思われる有棘細胞癌を治療する機会を得たので報告する. 方法:症例は70歳男性. 約40~50年前より右坐骨部に皮下結節が存在していた. 2004年4月初旬頃より急に拡大し, 痛みも伴ってきたため4月12日外科受診, 皮下膿瘍の診断にて切開, 排膿を施行された. その後, 炎症所見の改善は認められるも創治癒傾向が認められないため4月22日, 当科紹介となった. 結果:右臀部に切開創が認められたがその周辺は皮下に硬結を有し, 直系は約8cmに達した. 創内より生検を施行したところ有棘細胞癌との診断であった. MRI上大啓筋に接し, 一部境界不明瞭, 全身検索にて...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 1; no. 4; p. 233
Main Authors 岡 敏行, 古谷政一, 岩切 致, 百束比古
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2005
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Summary:目的:今回臀部表皮嚢腫より発生したと思われる有棘細胞癌を治療する機会を得たので報告する. 方法:症例は70歳男性. 約40~50年前より右坐骨部に皮下結節が存在していた. 2004年4月初旬頃より急に拡大し, 痛みも伴ってきたため4月12日外科受診, 皮下膿瘍の診断にて切開, 排膿を施行された. その後, 炎症所見の改善は認められるも創治癒傾向が認められないため4月22日, 当科紹介となった. 結果:右臀部に切開創が認められたがその周辺は皮下に硬結を有し, 直系は約8cmに達した. 創内より生検を施行したところ有棘細胞癌との診断であった. MRI上大啓筋に接し, 一部境界不明瞭, 全身検索にて明らかな遠隔転移は認めなかったため6月16日全麻下に拡大切除術, 筋膜皮弁作成術を施行した. 組織学的には嚢胞様構造を認め, 嚢胞から連続的に異型細胞の増殖を認めたため表皮嚢腫由来の有棘細胞癌の可能性が高いものと思われた. 術後1年を経過した時点で再発, 転移は認めていない. 考察:表皮嚢腫からの悪性腫瘍発生の報告は稀に報告される. 表皮嚢腫由来の根拠として, 1)臨床的に表皮嚢腫と思われる腫瘤が長年存在し, ある時期から急速に増大してきたこと, 2)組織学的に表皮嚢腫の嚢腫構造が想起できること, 3)悪性化していない嚢腫壁が存在し, 壁と連続性に異型細胞の増殖を認めること, が挙げられる. 本症例はこれらの条件を満たしており表皮嚢腫由来の有棘細胞と診断した. また, 本邦での統計上, 臀部由来の表皮嚢腫からの悪性化例が最も多いとの報告もあり, 今後特に臀部発生の表皮嚢腫の摘出の際は必ず病理組織検査を行うことが必要と思われた.
ISSN:1349-8975