1.病理診断業務におけるシステム化
1. 検体数の推移 過去5年間検体数は組織検査, 細胞診, 酵素抗体いずれも増加傾向にある. 人員も第一病院の統廃合によって増加した. 2. 病理部データベースの現状 病理診断の精度向上, 事務的業務の軽減, 臨床からの問い合わせへの迅速な対応などを目的とし, 当病理部では平成2年からパソコンと市販のソフトを用いて患者情報のデータベース化を行っている. 細胞診では診断終了後に患者属性, 診断の入力を一括して行っている. 組織診では患者属性を受付時に入力し, 報告用紙, 受付台帳を出力する. また, 手術材料についてはデジタルカメラで臓器を撮影しパソコンによるデータベース化を行うとともに, その...
Saved in:
Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 67; no. 3; p. 212 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2000
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-4676 |
Cover
Summary: | 1. 検体数の推移 過去5年間検体数は組織検査, 細胞診, 酵素抗体いずれも増加傾向にある. 人員も第一病院の統廃合によって増加した. 2. 病理部データベースの現状 病理診断の精度向上, 事務的業務の軽減, 臨床からの問い合わせへの迅速な対応などを目的とし, 当病理部では平成2年からパソコンと市販のソフトを用いて患者情報のデータベース化を行っている. 細胞診では診断終了後に患者属性, 診断の入力を一括して行っている. 組織診では患者属性を受付時に入力し, 報告用紙, 受付台帳を出力する. また, 手術材料についてはデジタルカメラで臓器を撮影しパソコンによるデータベース化を行うとともに, その画像を出力し, 切り出し図として使用している. 診断情報は病理医によりコード化されたものを, 事務担当者が入力している. 診断などが簡単に閲覧できるように, 組織診台帳の打ち出しを定期的に行っている. また, 臨床情報は検査伝票をスキャナーにて画像データとして保存している. 現在, 手術材料の画像の取り出しや, 患者の既往歴検索に以上のデータベースを有効に活用し, 診断業務, 臨床からの問い合わせなどに役立てている. 3. 免疫染色の白動化について 目的:染色の安定化, 染色時間の短縮, 大量検体の処理. 免疫染色法の変遷:当病理部では昭和61年より免疫染色として酵素抗体法を行っている. 当初は用手法で染色していたため, 1回の染色枚数に限界があり, また染色時間に2日間を要していた. 平成9年より一部の処理を染色カゴにて行えるよう日本ターナー株式会社製のマキシタグキットを導入し, これはある程度大量処理が可能になった. しかし, 依然用手法のため, 染色に時間がかかること, 染色結果に担当者による個人差が出やすいことなど精度管理に問題があった. 平成11年11月よりベンタナNX自動免疫染色システムを試験的に導入した. 自動免疫染色システム導入により, 個人差の無い安定した染色結果が得られ, 精度管理が容易になり診断の向上に寄与している. また, 一度に多数標本の処理が可能になり, 染色時間が大幅に短縮されつつある. 緊急の免疫染色に対応することも可能になると思われる. 4. 細胞診精度管理 1)精度管理班による取り組み:細胞診の診断精度向上を目的とし, 病理部の技師で婦人科, 呼吸器, 甲状腺, 耳鼻科領域, 泌尿器, 乳腺, その他の4班の精度管理グループを編成した. それぞれの班は, 月に1回過去の1ヵ月分の細胞診について組織診断とデータベースを利用して照合させ, 不一致例, 一致例, 典型例などを拾い上げて検討し, その中から問題症例を選び, 月1回のカンファレンスにかけて, その後の診断精度向上に役立てている. 2)穿刺細胞診における複数の細胞検査士による判定:穿刺吸引細胞診は診断結果が, そのまま治療に結びつく場合があり, 誤判定の診療に与える影響は大きい. 誤判定のリスクを減らすことを目的とし複数(3名以上)の細胞検査士による判定を行っている. 具体的には, 複数の細胞検査士が, 別々に判定した結果を基に, 討論した上で代表者が総合判定を報告書に記載するもので, 過大, 過小判定を回避できた. さらにこの方法は多くの細胞検査士が多彩な症例を経験する機会を増すとともに討論する機会も増え, 細胞検査士の質的向上にも役立つと考えられる. 5. 病理部の将来構想 近年の電子機器およびパソコンの進歩普及は目覚ましく, 病理部門も例外ではない. 将来的には, 初め遠隔病理診断などのシステムを導入し, 術中迅速診断, 診断困難例などの, 多施設参加による問題解決や, 質の高い診断に向けての専門領域との相互活用を考えている. |
---|---|
ISSN: | 1345-4676 |