The Nucleophosmin-Retinoic Acid Receptor Fusion in t (5;17) Acute Promyelocytic Leukemia
急性前骨髄球性白血病(APL)に特異的な染色体異常t(15;17)の亜型として, t(5;17)転座の小児APL 1症例を演者らは経験した. この症例に関する分子生物学的検討がBLOOD, Vol87, No3(1996):pp882-886にすでに発表されているが, 本講演はAPLの概論とt(5;17)症例の追加報告である. 本症例の白血病細胞より同定された癌遺伝子NPM-RARは, 5番, 17番染色体上のヌクレオホスミン(NPM)遺伝子としてレチノイン酸レセプタ-α(RARA)遺伝子の融合により形成されている. NPM, RARAはそれぞれKi-1リンパ腫, APLの他, 種々の造血器腫...
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Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 63; no. 5; p. 437 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
1996
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ISSN | 1345-4676 |
Cover
Summary: | 急性前骨髄球性白血病(APL)に特異的な染色体異常t(15;17)の亜型として, t(5;17)転座の小児APL 1症例を演者らは経験した. この症例に関する分子生物学的検討がBLOOD, Vol87, No3(1996):pp882-886にすでに発表されているが, 本講演はAPLの概論とt(5;17)症例の追加報告である. 本症例の白血病細胞より同定された癌遺伝子NPM-RARは, 5番, 17番染色体上のヌクレオホスミン(NPM)遺伝子としてレチノイン酸レセプタ-α(RARA)遺伝子の融合により形成されている. NPM, RARAはそれぞれKi-1リンパ腫, APLの他, 種々の造血器腫瘍における責任遺伝子としてクローニングされている. 正常細胞ではNPMタンパク質は核小体に局在し, ribosomal RNAのprocessingとtransportに関わっている. RARAタンパク質はレチノイン酸Xレセプター(RXR)と2量体RAR-RXRを形成し, これがretinoic acid responsive geneの転写因子として働いている. NPM-RAR融合タンパク質の, 白血病細胞における分子動態を解きあかすため, 今回あらたにNPM-RAR, RAR, RXR遺伝子などが細胞株にco-transfectionされた. これらtransfectantの解析により, NPM-RARタンパク質の細胞核内局在性, RARへの競合拮抗作用やCD14発現への阻害作用などが確認された. この結果をもとに, 演者らは次のように推測している. (1)過剰なNPM-RARタンパク質がRXRと2量体を作るため, RAR-RXRの形成が阻害され(dominant negative), retinoic acid responsive gene発現が低下し細胞の分化能が失われた. (2)NPM-RARタンパク質それ自体がtranscriptional activatorとして働き, 細胞増殖促進に働いた. 演者らは, NPM-RARの関与したシグナル伝達系について現在検討中であり, 上記仮説の検分を含めたAPLのさらなる分子病態解明が期待される. (文責:松岡弘樹) |
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ISSN: | 1345-4676 |