症例1:再発BTの1症例

83歳男性で, 昭和15年に発病, 22年入所. 32年にLと診断される. 散発的にスメアが0.5~1を繰り返していたが, 47年より30年以上陰性であった. 平成14年9月24日, 右頸部に梅干大の境界明瞭な環状紅斑が1個出現し皮膚科を受診. 自覚症状はなし. 大耳介神経肥厚(-). TT~BT皮疹を考慮しつつも遠心性環状紅斑(EAC) と診断. 年齢も考慮して外用ステロイド軟膏で経過観察するも不変. 寧ろ, 周堤が崩れ環状紅斑は不規則に拡大. 11月17日基本治療科紹介. スメア血清抗PGL-1抗体共に(-). 神経所見も著変なし. 21日に生検. 組織はH.Eで血管周囲を中心にリンパ球主...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 73; no. 1; p. 69
Main Authors 佐伯圭介, 長尾榮治, 松岡正典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 2004
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Summary:83歳男性で, 昭和15年に発病, 22年入所. 32年にLと診断される. 散発的にスメアが0.5~1を繰り返していたが, 47年より30年以上陰性であった. 平成14年9月24日, 右頸部に梅干大の境界明瞭な環状紅斑が1個出現し皮膚科を受診. 自覚症状はなし. 大耳介神経肥厚(-). TT~BT皮疹を考慮しつつも遠心性環状紅斑(EAC) と診断. 年齢も考慮して外用ステロイド軟膏で経過観察するも不変. 寧ろ, 周堤が崩れ環状紅斑は不規則に拡大. 11月17日基本治療科紹介. スメア血清抗PGL-1抗体共に(-). 神経所見も著変なし. 21日に生検. 組織はH.Eで血管周囲を中心にリンパ球主体のcoat-sleeve like infiltratinnが見られるのみで, 類上皮細胞性肉芽腫なく巨細胞も見られず, EACにcompatibleという所見であった. Sarcoidosisを含めた環状紅斑を呈する他疾患とも合致せず. 比較的短時間で消失再発を繰り返すEACと異なり, この皮疹は全く消失せず持続. 非典型的なハンセン病を考え, H. 15年1月10日に15番メスにて組織液を採取し70%エタノール浸漬してPCR材料を作製. DDS耐性遺伝子領域(fol-P)にてPCR(+)であったがPoint mutationは起こっていなかった. あとの2つ, RFP耐性遺伝子領域(rpoB)とQuinolone耐性遺伝子領域(8yrA)は増幅出来ず変異解析出来なかった. 特殊染色ではFite染色にて多数の菌が認められ, 抗PGL-1抗体染色も陽性であり再発BTと診断した. 皮疹は1個のままで推移. 腎機能に問題があるためDDSRFPの投与を断念, 代わりにLVFXB663の投与を2月13日より開始. 開始後2週程で皮疹は著明に槌色化. (討議) 11月の生検については, 組織学的には遠心性環状紅斑Erythema annulare centrifugum(Darier)であるが, これは反応性皮疹であり感染症でも出現するのだからその感染症がハンセン病だと考えたらこの組織で矛盾はしないという意見, またBTの初期像として矛盾しないという意見もあり, ハンセン病の既往がある症例で遠心性環状紅斑の組織像を見た場合には, BTを疑う必要があることが示された. また, スクリーニングで一度抗核抗体の検索をしてみては?元L型の患者でmultifocalにcluster形成した像ではないか?毛包周囲のリンパ球浸潤は, 何か他の感染症の可能性はないか?などの意見も出された.
ISSN:1342-3681