15 ツナギアブ属数種の触角と外部生殖器の特徴(双翅目アブ科)

双翅目アブ科ツナギアブ属(以下Hirosia属)は, 幼虫の形態学的差異を指標としてアブ属(以下Tabanus属)から分離独立された属である. 成虫では形態的に違いが少ないものの, 触角第3節基部の背突起の隆起角が小さいことが相違点の一つであるとされている. しかし, その他の外部形態では両属を明確に区分するのは困難であるといわれ, これらのことから, 諸外国の研究者の中にはHirosia属の独立性に疑問を持つ者が少なくない. そこでTabanus属とHirosia属の独立性を明らかにするべく, 両属あわせて8種雌成虫の外部生殖器と触角の形態を精査するとともに, その細部を計測し, 比較した....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 62; no. 2; p. 134
Main Authors 佐々木功, 佐々木均
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 2011
Online AccessGet full text
ISSN0424-7086

Cover

More Information
Summary:双翅目アブ科ツナギアブ属(以下Hirosia属)は, 幼虫の形態学的差異を指標としてアブ属(以下Tabanus属)から分離独立された属である. 成虫では形態的に違いが少ないものの, 触角第3節基部の背突起の隆起角が小さいことが相違点の一つであるとされている. しかし, その他の外部形態では両属を明確に区分するのは困難であるといわれ, これらのことから, 諸外国の研究者の中にはHirosia属の独立性に疑問を持つ者が少なくない. そこでTabanus属とHirosia属の独立性を明らかにするべく, 両属あわせて8種雌成虫の外部生殖器と触角の形態を精査するとともに, その細部を計測し, 比較した. その結果, 触角においては, 特徴とされる第3節基部の背突起の隆起角度では, 2属の8種間に有意差が認められなかった(p<0.01). また, 外部生殖器の尾角, 第9, 10背板を比較した結果, その形状に多少の違いが見られたものの, 大きな差異は観察されなかった. また, 第8腹板を比較した結果, 末端部や先端部の形状の比に違いが見られたが, 腹板の縦横の比には違いが見られなかった. さらに, 生殖叉器では, 属間に大きな違いは見られなかった. 今後は他部位にも検討の対象を広げて本属の独立性を解明していきたい.
ISSN:0424-7086