心電図上陰性丁波が長期間残存した甲状腺機能亢進症合併急性心不全の1例

心不全にて来院し, 特異な心電図変化を示した1例を経験した. 症例は75歳, 女性で, 動悸, 呼吸 困難を主訴に当科を受診した. 来院時, 著明な高血圧と肺うっ血所見を認めた. 心電図では洞頻脈左房負荷とV1~V3のST上昇がみられ, 血液検査では甲状腺機能亢進所見を認めた. 入院後, 減負荷療法と降圧療法により心不全症状は改善し血圧は正常化したが, 心電図においてQT時間の延長とともに陰性丁波がほぼ全誘導に出現し, 遷延した. 心エコー図上, 入院時に心尖部の壁運動異常がみられたが, その後は改善した. 1別iodine-metaiodobenzylguanidine(123 I-MIBG...

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Published in医療 Vol. 54; no. 4; pp. 183 - 188
Main Authors 添木武, 田中英治, 福田信夫, 篠原尚典, 板東完治, 田村禎通
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立医療学会 2000
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Summary:心不全にて来院し, 特異な心電図変化を示した1例を経験した. 症例は75歳, 女性で, 動悸, 呼吸 困難を主訴に当科を受診した. 来院時, 著明な高血圧と肺うっ血所見を認めた. 心電図では洞頻脈左房負荷とV1~V3のST上昇がみられ, 血液検査では甲状腺機能亢進所見を認めた. 入院後, 減負荷療法と降圧療法により心不全症状は改善し血圧は正常化したが, 心電図においてQT時間の延長とともに陰性丁波がほぼ全誘導に出現し, 遷延した. 心エコー図上, 入院時に心尖部の壁運動異常がみられたが, その後は改善した. 1別iodine-metaiodobenzylguanidine(123 I-MIBG)心筋シンチでは, 亜急性期に心尖部および側壁下壁の集積低下を認め, 慢性期にも下壁を中心に集積低下は遷延した. 冠動脈造上有意狭窄は認めず, また腹部CT上副腎腫瘍は認めなかった. 本例は, 甲状腺機能冗進症と高血圧により心臓交感神経系の異常冗進が惹起され, これによって心筋障害およびそれにともなう心電図異常をきたしたものと推察された.
ISSN:0021-1699