第4, 第5および第6脊髄神経後根結紮ラットはニューロパシックペインのモデルとなりうるか
近年ニューロパシックペインの動物実験モデルが多数開発され, ヒトでのhyperalgesiaやallodyniaの発生機序の解明に役立っている. 今回ラットのL4-L6の脊髄神経後根(以下後根)をゆるく結紮するモデルを作成し, 22週にわたりラットの行動の観察および各種検査を行い, 本モデルの有用性を検討した. 〔方法〕34匹の雄のSprague-Dawleyラットを用いた. 酸素-ハロセン(1.5-2%)麻酔下にL2およびL3椎弓の左側一部を除去した後, 顕微鏡下に硬膜を切開し, 左側L4-L6の後根(後根神経節よりも中枢側)を露出した. 13匹では7-0絹糸をL4, L5, L6それぞれに...
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Published in | PAIN RESEARCH Vol. 13; no. 3; p. 112 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本疼痛学会
1998
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Summary: | 近年ニューロパシックペインの動物実験モデルが多数開発され, ヒトでのhyperalgesiaやallodyniaの発生機序の解明に役立っている. 今回ラットのL4-L6の脊髄神経後根(以下後根)をゆるく結紮するモデルを作成し, 22週にわたりラットの行動の観察および各種検査を行い, 本モデルの有用性を検討した. 〔方法〕34匹の雄のSprague-Dawleyラットを用いた. 酸素-ハロセン(1.5-2%)麻酔下にL2およびL3椎弓の左側一部を除去した後, 顕微鏡下に硬膜を切開し, 左側L4-L6の後根(後根神経節よりも中枢側)を露出した. 13匹では7-0絹糸をL4, L5, L6それぞれに1本ずつ(S群), 11匹ではそれぞれに2本ずつ(D群)ゆるく全周性に結紮した. 残り10匹では硬膜切開のみを施行した(対照群). 手術後3日, 1週, 2週, 3週, 以後2-4週毎に22週まで以下の4種の検査を施行した. 検査1:von Frey filamentによる機械的刺激閾値, 2:後肢の体重支持の割合(左右差), 3:熱刺激に対する後肢の逃避反応時間, 4:熱刺激に対する後肢の逃避反応の強さ〔結果〕いずれの群でも術後後肢を舐めたり噛んだりするような疼痛行動は認められなかった. 対照群では全ての検査で明らかな変化は認められなかった. S群およびD群ではほぼ同様の結果となったためまとめた. 検査1:結紮側において手術3日後より明らかに低下し, 3週後には最低値(術前値の約20%)となった. その後徐々に回復したが, 22週後も術前値に比し低値であった(約70%). 非結紮側も同様の変化であったが, その発現は遅く2週後から始まり5週後に最低値(約30%)を示した. 回復は結紮側に比べ早く, 22週後には術前値まで復した. 検査2:結紮側の後肢が術前は全体重の30%を支持していたが, 手術3日後には15%と著明に低下し, 5週後まで低下したままであった. 検査3:結紮側において手術3日後および1週後は明らかに延長していた(術前値の約130%)が, 2週後には術前値に復した. 非結紮側では明らかな変化はなかった. 検査4:結紮側の熱刺激に対する反応は手術1-3週後減弱していたが, 5週後には回復した. また, 非結紮側では1-3週後の反応は術前とかわりなかったが5-9週後の反応で増強していた. 〔結語〕後根結紮モデルでは, 結紮側のmechanical allodyniaは発現するがthermal hyperalgesiaは発現せず, 非結紮側では両者とも発現する. |
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ISSN: | 0915-8588 |