脳虚血時, 細胞内外のNa+ の変化

今回われわれは^^23 Na-MRSを用いて脳虚血中, 後における細胞内外のナトリウムの変化を調査し, あわせて^^31 P-MRSにて各時点のエネルギー代謝, 細胞内pHについても測定したので報告する. <対象と方法>ラットをシフト薬投与群と, 非投与群に分け, シフト薬投与群ではDy(TTHA)※を1.5hかけて注入した. その後両群において15分間の前脳虚血を作成した. 前脳虚血は両側頸動脈を結紮し, 平均動脈圧が30-40mmHg前後になるように脱血して作成した. 虚血終了後, 両側頸動脈を再開通させ, 血液を動脈に戻して60分間測定を行った. <結果と考察>^...

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Published in蘇生 Vol. 11; p. 107
Main Authors 倉田正士, 奥田真弘, 宗行万之助
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 1993
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ISSN0288-4348

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Summary:今回われわれは^^23 Na-MRSを用いて脳虚血中, 後における細胞内外のナトリウムの変化を調査し, あわせて^^31 P-MRSにて各時点のエネルギー代謝, 細胞内pHについても測定したので報告する. <対象と方法>ラットをシフト薬投与群と, 非投与群に分け, シフト薬投与群ではDy(TTHA)※を1.5hかけて注入した. その後両群において15分間の前脳虚血を作成した. 前脳虚血は両側頸動脈を結紮し, 平均動脈圧が30-40mmHg前後になるように脱血して作成した. 虚血終了後, 両側頸動脈を再開通させ, 血液を動脈に戻して60分間測定を行った. <結果と考察>^^31 P-MRSでは虚血に伴いエネルギー代謝の著明な悪化, 細胞内pHの低下がみられたが, 血流再開により速やかに改善した. ^^23 Na-MRSではシフト薬非投与群では虚血によりナトリウムのピークは軽度減少, 再灌流により軽度増加した. ナトリウムの細胞内外での変化を調べるため, シフト薬を投与したところ, ナトリウムのピークはシフトピークと非シフトピークに分かれた. 肝臓, 骨格筋では, 非シフトピークは細胞内の, シフトピークは細胞外のナトリウムを表わし, 虚血状態にすると細胞外から細胞内へナトリウムが移動するため非シフトピークは上昇しシフトピークは低下すると報告されている. しかし今回の実験では, 非シフトピークは減少し, シフトピークは増加した. その原因としては脳にはBlood Brain Barrierが存在するためシフト薬が細胞外に均一には浸透せず, 特に, 脳脊髄液中にはほとんど浸透しなかったためであり, 非シフトピークの減少は脳脊髄液中のナトリウムの減少と考えられた. シフトピークの増加は脳脊髄液中のナトリウムの細胞間質へ移動および虚血に伴う脳血管の拡張であり, 再灌流時の増加は細胞間質へのナトリウムの貯留と考えられた. 以上より, 15分間の前脳虚血における細胞間質のナトリウムの細胞内流入は少ないと考えられた. ※Dy(TTHA)Dysprosium triethylenetetramine-hexaacetic acid
ISSN:0288-4348