79.下顎多発性セメント -骨病変が疑われた症例に対し10年間の経過観察を行なった一例

【目的】上下顎骨の画像検査を行ない, 顎骨内にX線透過性-不透過性病変を偶然発見する機会は少なくない. それら病変のうち, セメント骨病変などの非腫瘍性病変は外科処置をされることなく経過観察されることが多い. 無処置で数年間経過観察されたセメント-骨病変の報告は多いが, 10年以上の長期にわたって経過観察された症例の報告は国内外のいずれを検索しても少ない. 今回我々は下顎多発性セメント-骨病変が疑われた症例に対し10年間経過観察する経験を得たので報告する. 【患者】女性, 初診時年齢44歳, 現在54歳. 初診:1995年8月1日. 主訴:下顎前歯部違和感. 既往歴:結核. 現病歴および現症:...

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Published in歯科放射線 Vol. 45; no. 4; pp. 189 - 190
Main Authors 山野 茂, 箕輪和行, 戸塚靖則, 大森桂一, 中村太保
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2005
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ISSN0389-9705

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Summary:【目的】上下顎骨の画像検査を行ない, 顎骨内にX線透過性-不透過性病変を偶然発見する機会は少なくない. それら病変のうち, セメント骨病変などの非腫瘍性病変は外科処置をされることなく経過観察されることが多い. 無処置で数年間経過観察されたセメント-骨病変の報告は多いが, 10年以上の長期にわたって経過観察された症例の報告は国内外のいずれを検索しても少ない. 今回我々は下顎多発性セメント-骨病変が疑われた症例に対し10年間経過観察する経験を得たので報告する. 【患者】女性, 初診時年齢44歳, 現在54歳. 初診:1995年8月1日. 主訴:下顎前歯部違和感. 既往歴:結核. 現病歴および現症:1995年7月初旬, 下顎前歯部違和感出現し近医歯科受診, X-P撮影し異常を指摘され, 紹介先の病院歯科のX線検査で下顎骨多発性セメント質腫疑いと診断された. 同病院歯科で生検を進められたが, 患者および家族の希望により同年8月初め, 紹介により北海道大学歯学部附属病院口腔外科を受診した. 初診時, 下顎前歯部に違和感を自覚した. また左下顎第二小臼歯頬側歯槽部に骨膨隆が認められた. 【画像および病理所見】初診時のパノラマ断層像にて下顎前歯部にX線透過像からなる不定形で境界明瞭な病変, 左下顎第二小臼歯部にX線不透過像からなる不定形で境界明瞭な病変, 右下顎大臼歯部に透過像と不透過像からなる不定形で境界比較的明瞭な病変がみられた. CT像にてこれら病変による下顎骨の軽度の骨膨隆性変化と皮質骨の菲薄化が認められた. また, これら病変は基本的に歯根と連続していた. 下顎前歯部の病変に対して初診月内に開窓術と生検が施行され, 病理診断はBone tissueのみであった. 初診から10年後のCT像で, 下顎前歯部の病変は開窓後, サイズ縮小と内部骨新生を認めなかった. 生検を施行しなかった右下顎臼歯部の病変にサイズ増大と内部吸収値の上昇がみられ, 左下顎第二小臼歯部の病変には著変を認めなかった. 以上よりmultiple cemental dysplasiaが考えられた.
ISSN:0389-9705