6. 9.6μm炭酸ガスレーザーのエナメル質, 象牙質照射時の形態学的変化に関する研究(第一報)

【研究目的】長年, 硬組織の切削には主にタービンや電気エンジンが用いられてきた. 様々なレーザーの開発が進むにつれレーザーも利用されるようになり, 現在ではEr-YAGレーザーが多く用いられている. 従来の炭酸ガスレーザーは, その出力などの問題から, 窩洞形成には適さないとされてきた. この研究では, 炭酸ガスレーザーの波長を10.6μmから9.6μmに変えることにより硬組織の切削が可能かどうか, その切削面の組織変化を観察し, 検討することが目的である. 【材料および方法】ヒト抜去歯総数25本(レーザー照射群20本, コントロール群5本)を使用した. 波長9.6μm炭酸ガスレーザーの試作機...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 410 - 411
Main Authors 永井香織, 木下潤一朗, 木村裕一, 松本光吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2004
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Summary:【研究目的】長年, 硬組織の切削には主にタービンや電気エンジンが用いられてきた. 様々なレーザーの開発が進むにつれレーザーも利用されるようになり, 現在ではEr-YAGレーザーが多く用いられている. 従来の炭酸ガスレーザーは, その出力などの問題から, 窩洞形成には適さないとされてきた. この研究では, 炭酸ガスレーザーの波長を10.6μmから9.6μmに変えることにより硬組織の切削が可能かどうか, その切削面の組織変化を観察し, 検討することが目的である. 【材料および方法】ヒト抜去歯総数25本(レーザー照射群20本, コントロール群5本)を使用した. 波長9.6μm炭酸ガスレーザーの試作機を用い, 出力4W, 10pps, パルス幅100μs, 焦点距離70mm, 10ml/minの流水下で切削した. エナメル質にレーザーを照射する場合は唇頬側面に, 象牙質はスケーラーにて歯根表面のセメント質を除去し, 象牙質を露出させてから垂直に照射を行い, コントロール群5本はエアータービンで同様の部位に窩洞を形成した. 実体顕微鏡, 走査型電子顕微鏡(SEM)および, 象牙質のみ透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した. 【結果および考察】レーザー光は自動的に螺旋を描くよう照射されるため, SEMにて観察すると, 窩洞表面は波形を描いていた. 照射部位を中心に, 高熱により歯質が溶融, 冷却されて固まった溶岩状構造がみられた. TEMにて観察すると, 表層は炭化し, 組織が熱変性を生じていることがわかった. しかし, その層は薄く1μm程であり, 直下には熱による組織変性が認められなかったことから, 歯髄への影響は少ないと考えられた. さらに検討を行うことにより, 臨床的応用が示唆された.
ISSN:0285-922X