パルス型NdYAGレーザーを応用した歯髄診断法に関する基礎並びに臨床的研究

現在, レーザーは歯科領域において, 様々な臨床応用が行われ, その有効性が認められている. しかし, 歯髄診断の分野にレーザーを応用した報告はない. 今回, 歯髄診断の分野にパルス型Nd:YAGレーザーを応用することを試みた. 実際にレーザーを歯髄診断の手段として臨床に導入するには歯髄に損傷がなく, かつ診断として適切な照射条件を設定する必要がある. 基礎実験では上記を満たす条件を設定する目的で, 抜去歯に各種エネルギー密度でパルス型Nd:YAGレーザーを照射し, 髄腔側温度上昇についての実験をサーモグラフィーにて行った. その結果, 歯質から10mmの距離を保持しながら, 出力:2W, 繰...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 20; no. 1; pp. 40 - 51
Main Author 松本直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2000
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Summary:現在, レーザーは歯科領域において, 様々な臨床応用が行われ, その有効性が認められている. しかし, 歯髄診断の分野にレーザーを応用した報告はない. 今回, 歯髄診断の分野にパルス型Nd:YAGレーザーを応用することを試みた. 実際にレーザーを歯髄診断の手段として臨床に導入するには歯髄に損傷がなく, かつ診断として適切な照射条件を設定する必要がある. 基礎実験では上記を満たす条件を設定する目的で, 抜去歯に各種エネルギー密度でパルス型Nd:YAGレーザーを照射し, 髄腔側温度上昇についての実験をサーモグラフィーにて行った. その結果, 歯質から10mmの距離を保持しながら, 出力:2W, 繰り返し速度:30pps, 照射スポットサイズ:約3mm, 1パルスあたりのエネルギー:66.7mJ, 照射時間:10秒以内という照射条件を得た. この照射条件を用いて, 臨床的研究を行った. 臨床的研究ではレーザー照射による歯髄の血流変化, 健全歯髄および歯髄炎における反応の性質, 誘発痛発現時間, 誘発痛持続時間について検討を行い, 次の結果を得た. 1.健全上顎中切歯にレーザー照射を行ったときの血流変化をレーザードップラー血流計にて測定したところレーザー照射直後に一過性の血流増加がみられ, 照射終了後には速やかに術前の状態に回復した. 誘発痛発現時間の平均値±標準偏差は4.8±2.3秒であり, 電気歯髄診断器(14.9±2.5秒)に比べ約1/3の時間で感覚応答が得られた. 2.健全上下顎前歯にレーザー照射したときの反応の性質は「痛い」という感覚応答を示した被験者は存在せず, 多くは「温かい」という極めて軽度の温熱感を訴えた(78.7%). また, 「感じない」と訴えた被験者も存在した(21.3%). 誘発痛発現時間は, 下顎中切歯が最も短く(1.86±0.38秒), 上顎犬歯が最も長い値(4.48±0.92秒)を示した. 同顎では, 中切歯, 側切歯, 犬歯の順に長くなる傾向であった.
ISSN:0285-922X