三叉神経鞘腫(root type)の1手術治験例

三叉神経鞘腫は比較的まれな腫瘍であり, その中でもroot typeは少なく文献的には約30%と言われている. 最近我々はそのroot typeの症例を経験したので報告した. 症例は56才女性. 1980年春頃から左顔面にしびれ感を訴え, 1981年10月頃より左上下肢の脱力感を自覚し, 最近嗄声・嚥下障害も生じてきたため, 当科を受診した. 入院時神経学的異常所見として, 瞳孔不同(右2.5mm, 左3.0mm), 左三叉神経第II枝領域の知覚鈍麻, 左角膜反射減弱, 左咽頭反射減弱, 嚥下障害, 発声困難, 左不全片麻痺, 左協調運動障害があった. しかし, 顔面神経や聴神経の障害は認めら...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 25
Main Authors 江尻孝夫, 村上寿治, 斎木巌, 金谷春之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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ISSN0470-8105

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Summary:三叉神経鞘腫は比較的まれな腫瘍であり, その中でもroot typeは少なく文献的には約30%と言われている. 最近我々はそのroot typeの症例を経験したので報告した. 症例は56才女性. 1980年春頃から左顔面にしびれ感を訴え, 1981年10月頃より左上下肢の脱力感を自覚し, 最近嗄声・嚥下障害も生じてきたため, 当科を受診した. 入院時神経学的異常所見として, 瞳孔不同(右2.5mm, 左3.0mm), 左三叉神経第II枝領域の知覚鈍麻, 左角膜反射減弱, 左咽頭反射減弱, 嚥下障害, 発声困難, 左不全片麻痺, 左協調運動障害があった. しかし, 顔面神経や聴神経の障害は認められず, 脳圧亢進症状もなかった. 手術所見は, 後頭蓋窩に限局したroot typeのneurinomaであった. また, 神経学, 頭部単純写, CT, 脳血管写などの所見により, 聴神経鞘腫との鑑別およびroot typeの診断について, 若干の文献的考察を行った.
ISSN:0470-8105