4. 当院における輸血副作用管理とその現状
【はじめに】輸血副作用が発生した場合, 発生状況を迅速に把握することは原因究明およびその後の対応に重要である. 当院輸血部では, 2001年6月に運用を変更する以前は, 輸血副作用報告は臨床側の申告制であったことから, 輸血副作用全体を把握出来ていなかった. 2001年6月に「交差適合試験結果報告書」を複写式・3枚綴りに変更し, 全ての血液製剤について輸血副作用の有無にかかわらず輸血実施記録を回収することとした. さらに, 2002年11月「輸血副作用調査票」を作成し, 中等度以上の輸血副作用に関して, 状況に応じて輸血実施部署に赴き輸血副作用発生状況を調査することにした. 【輸血副作用の発生...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 5; pp. 657 - 658 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血・細胞治療学会
2009
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1881-3011 |
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Summary: | 【はじめに】輸血副作用が発生した場合, 発生状況を迅速に把握することは原因究明およびその後の対応に重要である. 当院輸血部では, 2001年6月に運用を変更する以前は, 輸血副作用報告は臨床側の申告制であったことから, 輸血副作用全体を把握出来ていなかった. 2001年6月に「交差適合試験結果報告書」を複写式・3枚綴りに変更し, 全ての血液製剤について輸血副作用の有無にかかわらず輸血実施記録を回収することとした. さらに, 2002年11月「輸血副作用調査票」を作成し, 中等度以上の輸血副作用に関して, 状況に応じて輸血実施部署に赴き輸血副作用発生状況を調査することにした. 【輸血副作用の発生状況】1996年1月から2001年5月までの総輸血実施件数は70,870件, 輸血副作用発生件数は17件, 発生率は約0.02%であった. 症状別では軽症1件(6%), 中等症7件(41%), 重症9件(53%)であった. 血液製剤別では赤血球製剤3件(18%), 新鮮凍結血漿1件(6%), 血小板製剤13件(76%)であった. 2001年6月から2009年6月までの総輸血実施件数は77,118件, 輸血副作用発生件数は495件, 発生率は0.64%であった. 症状別では軽症434件(87.7%), 中等症42件(8.5%), 重症19件(3.8%)であった. 血液製剤別では赤血球製剤84件(17%), 新鮮凍結血漿71件(14.3%), 血小板製剤340件(68.7%)であった. 【結語】従来の輸血副作用報告は申告制であったことから, 軽症および中等症の副作用がほとんど報告されていなかった可能性がある. 運用変更後は, すべての血液製剤について輸血実施記録を回収すること, および輸血副作用発生時は輸血実施部署に赴き発生状況を確認することなどを行い, 輸血副作用全体を把握することが可能となった. 当院における輸血副作用の発生頻度は, 厚生労働省研究班の報告と比べ大きな差はなかった. 輸血副作用の管理を正確に行うためには, 輸血部の積極的関与が重要であると思われる. |
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ISSN: | 1881-3011 |