1.急激な経過をたどった特発性混合型自己免疫性溶血性貧血の1例

【はじめに】自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の中には, 稀に温式抗赤血球自己抗体と寒冷凝集素がいずれも溶血に関与していると推定される症例もあり, 混合型AIHAと呼ばれている. 慢性の経過から急性増悪をきたし, 重度の貧血を認める. 今回我々は, 検査が困難であった特発性混合型AIHAを経験したので報告する. 【症例】患者:61歳男性 既往歴:肝機能障害主訴:貧血, 赤色尿, 黄疸 平成7年から肝機能障害のため, 当院消化器・腎臓内科を3年に1回程度受診していた. 平成18年2月の人間ドックでは特に貧血, 黄疸の指摘なし. 6月から貧血症状を自覚し, 7月に入り赤色尿と黄疸を認めたため, 平成...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 53; no. 1; pp. 73 - 74
Main Authors 森弥生, 富松貴裕, 河野節美, 宮崎泰彦, 大塚英一, 佐分利能生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2007
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Summary:【はじめに】自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の中には, 稀に温式抗赤血球自己抗体と寒冷凝集素がいずれも溶血に関与していると推定される症例もあり, 混合型AIHAと呼ばれている. 慢性の経過から急性増悪をきたし, 重度の貧血を認める. 今回我々は, 検査が困難であった特発性混合型AIHAを経験したので報告する. 【症例】患者:61歳男性 既往歴:肝機能障害主訴:貧血, 赤色尿, 黄疸 平成7年から肝機能障害のため, 当院消化器・腎臓内科を3年に1回程度受診していた. 平成18年2月の人間ドックでは特に貧血, 黄疸の指摘なし. 6月から貧血症状を自覚し, 7月に入り赤色尿と黄疸を認めたため, 平成18年7月4日当院を受診した. 【入院時検査所見】RBC:1.82×10 6/μl, Hb:6.6g/dL, Ht:17.0%, Retic:18.7%, T-Bil:3.9mg/dL, LD:983IU/リットル, ハプトグロビン:10以下mg/dL, 尿潜血:(1+), 血液像(RBC):球状RBC・大小不同・凝集RBC【輸血検査所見】血液型:B型(+), CCDee 不規則抗体検査:酵素法(4+), クームス法(4+)直接抗グロブリン試験:広範囲(4+), 抗IgG(4+), 抗C3bd(3+)抗体同定検査, 抗体解離吸収試験:自己抗体抗C+e検出, 同種抗体の型特異性見られず【経過】平成18年7月4日, 自己免疫性溶血性貧血と診断されステロイド剤治療を開始した. その後7月7日にHbが3.6g/dLまで下がったため, B型(+)R2R2のIr-WRC2単位を輸血した. Hb5.5g/dLまで回復したが, 7月9日多発性肺塞栓症による急性心不全を合併して死亡された. 【考察】今回の症例は原因疾患を認めず入院6日目に患者死亡となった. ステロイド剤の効果が現れるまでに重症の貧血を認め輸血が必要になった. 行われた輸血で溶血性輸血副作用の報告はなかったが, 肺塞栓症を引き起こした原因であったことが疑われる. AIHAにおける抗体同定は困難な場合が多いが, 輸血はその病態のゆえに特有なリスクを伴うため, 自己抗体の同定と同種抗体の有無を確認し, 輸血用血液の選択を行うことは重要である.
ISSN:1881-3011