HTLV-Iぶどう膜炎の血清学的研究

はじめに:最近, 眼科領域において, HTLV-Iとぶどう膜炎との関連が注目されている. ぶどう膜炎の原因として感染性, 非感染性に分類されるが, 30~40%は原因不明である. 今回, この原因不明群についてHTLV-I抗体との関連について検討をしたので報告する. 対象および方法:1989年1月から1991年12月までに, 宮田眼科病院(都城市)および久留米大学病院眼科を受診したぶどう膜炎を含む種々の眼疾患患者858例についてHTLV-I抗体をPA法とEIA法で測定した. 結果:ぶどう膜炎以外の眼疾患患者では, 20歳代0.0%, 30歳代9.1%, 40歳代9.1%であり, 原因の明らかな...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 3; p. 683
Main Authors 福岡直美, 吉木景子, 中満三容子, 福吉葉子, 西村要子, 山口一成, 高月清久, 望月學
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1993
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ISSN0546-1448

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Summary:はじめに:最近, 眼科領域において, HTLV-Iとぶどう膜炎との関連が注目されている. ぶどう膜炎の原因として感染性, 非感染性に分類されるが, 30~40%は原因不明である. 今回, この原因不明群についてHTLV-I抗体との関連について検討をしたので報告する. 対象および方法:1989年1月から1991年12月までに, 宮田眼科病院(都城市)および久留米大学病院眼科を受診したぶどう膜炎を含む種々の眼疾患患者858例についてHTLV-I抗体をPA法とEIA法で測定した. 結果:ぶどう膜炎以外の眼疾患患者では, 20歳代0.0%, 30歳代9.1%, 40歳代9.1%であり, 原因の明らかなぶどう膜炎患者におけるHTLV-I抗体陽性率は, 20歳代で0.0%, 30歳代13.3%, 40歳代8.7%であった一方, 原因不明のぶどう膜炎患者においては, 20歳代47.3%, 30歳代29.4%, 40歳代35.0%であった. まとめ:従来原因不明とされていたぶどう膜炎の中にHTLV-Iキャリアが有意に多く存在し, しかも, このぶどう膜炎を伴うHTLV-Iキャリアの年齢分布が健常人のそれと異なり成人若年者(20~49歳)にきわめて高いことがわかった. 更に, 患者の前房水中の炎症細胞からHTLV-IプロウイルスがPCR法により高率に検出され, 眼局所にHTLV-I感染細胞が存在することもわかった. 今後, HTLV-I感染細胞がどのような機序で眼内炎症に関与するのかを明らかにしてゆきたい.
ISSN:0546-1448