赤血球の保存におけるグアニジノ化合物の変化
I目的:Uremic toxinとして知られているグアニジノ化合物(GC)は, 神経系だけでなく血液に対しても溶血作用, 血小板機能阻害作用などの毒性効果を示すことが報告されている. しかし, 血液の保存中におけるGCの変化については全く知られていない. 我々は, 主として赤血球製剤の保存中のGCの変化を測定し, 赤血球保存に及ぼすGCの影響について検討した. II方法:検体として, 200mlのCPD加血液から調製した赤血球濃厚液(CRC)及び血漿を用い, 5±1℃で保存した. GCの測定はHPLC法(JASCO Guanidinopakカラム)を用いた. 赤血球の保存状態の指標として, p...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 32; no. 2; p. 311 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
1986
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Summary: | I目的:Uremic toxinとして知られているグアニジノ化合物(GC)は, 神経系だけでなく血液に対しても溶血作用, 血小板機能阻害作用などの毒性効果を示すことが報告されている. しかし, 血液の保存中におけるGCの変化については全く知られていない. 我々は, 主として赤血球製剤の保存中のGCの変化を測定し, 赤血球保存に及ぼすGCの影響について検討した. II方法:検体として, 200mlのCPD加血液から調製した赤血球濃厚液(CRC)及び血漿を用い, 5±1℃で保存した. GCの測定はHPLC法(JASCO Guanidinopakカラム)を用いた. 赤血球の保存状態の指標として, pH, glucose, ATP, 2, 3-DPG, 溶血度. NH_3 及びmorphology scoreを測定した. III結果:4℃で21日間保存したCRCには, グアニジノコハク酸(GSA)3μM, グアニジノ酢酸2.5μM, アルギニン(Arg)11μM, N-アセチルアルギニン1.3μM, ホモアルギニン2.5μM, クレアチニン75μMが検出されたが, メチルグアニジン(MG)は痕跡程度であった. また, 保存中に濃度が変化した物質はArgとGSAであり, 前者は保存7日後に初期値の約20%に減少し, 後者は28日後に初期値の約2倍に増加した. このArgの低下現象は, 赤血球を除去した血漿の同条件による保存においてはみられなかった. CRCの保存において, Argを添加すると(1.4mM), morphologyが若干良好に維持され, 溶血度が減少する傾向を示した. IV結論:赤血球製剤の保存中のグアニジノ化合物の変化は比較的少なく, また毒性の強いMGやGSAは非常に低濃度であったので, 輸血に及ぼすこの種の化合物の影響はほとんどないと思われる. しかし, 赤血球製剤の保存中のArgの減少速度が速いこと, 及びArgを補うことによって赤血球形態が若干良好に維持されることから, Argが赤血球の保存に何らかの関与があることが示唆される. |
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ISSN: | 0546-1448 |