A, B抗原が著明に低下したAMLの一症例

AML, 骨質線維症, MDSなどの後天的な血液疾患では, 疾患の経過中, 時にABO式血液型が変化することが知られている. 今回, 我々はA, B抗原が著しく低下した症例を経験したので報告する. 症例:44才女性. 既往歴:1962年火傷のため皮膚移植. 1985年5~6月突発性難聴, メニエル病. 同年12月27日2ヶ月来の出血傾向を主訴としAMLの疑いのもとに他院より転院. 入院時(治療前)検査所見は末梢血RBC3.94×10^6 /μl, Hb10.4g/dl, Ht32.3%, 血小板30×10^3 /μl, WBC32.1×10^3 /μl(骨髄芽球66%, Auer小体陰性, P...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 32; no. 2; p. 272
Main Authors 山本惠子, 栗本聖子, 廣瀬豊, 中田智惠子, 柴山修司, 斉藤英彦, 大野竜三, 名倉英一, 浜口元洋, 安達興一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1986
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Summary:AML, 骨質線維症, MDSなどの後天的な血液疾患では, 疾患の経過中, 時にABO式血液型が変化することが知られている. 今回, 我々はA, B抗原が著しく低下した症例を経験したので報告する. 症例:44才女性. 既往歴:1962年火傷のため皮膚移植. 1985年5~6月突発性難聴, メニエル病. 同年12月27日2ヶ月来の出血傾向を主訴としAMLの疑いのもとに他院より転院. 入院時(治療前)検査所見は末梢血RBC3.94×10^6 /μl, Hb10.4g/dl, Ht32.3%, 血小板30×10^3 /μl, WBC32.1×10^3 /μl(骨髄芽球66%, Auer小体陰性, Pox陽性), 骨髄は過形成で骨髄芽球57.8%, 核型は解析し得た30核型のうち60%に47XX, +13の異常核型を認めた. 免疫グロブリンはIgG, IgMがやや高値. AML(FAB-M2)と診断され, 28日より16日間BHAC-DMP療法を実施したが寛解に至らず, 17日後Mitoxantron-AraC併用療法を開始した. 検査成績:常法の表検査で抗A, 抗B(人免, 動免とも)に直後陰性, 1分後抗Bにのみ弱い部分凝集. 裏検査は正常のAB型で表裏不一致となった. DAT, 不規則抗体とも陰性. Dolichos抗A1, 抗A+Bとも陰性, Ulex抗H. 抗A, 抗Bの吸着解離試験により患者赤血球上のA, B抗原を証明. 唾液中にもA, B, H物質を認めた. 型転換毒素はA, Bとも対照(AB, A, B)に比べ2~3管低く, 非凝集自己血球をaccepterとした場合には特にAに著しい低下(5管差)が認められた. Rh, MN抗原には著しい低下は認められなかった. 母子手帳, 本人の申告がAB, 夫A, 子供AとABであることも考慮しAB型と決定. 以後AB型血液を輸血しているが副作用は認めず, 経過観察中である. むすび:AMLのためA, B型転換酵素が低下し, A, B抗原が著明に減少したと思われる症例を報告した. Salmonらによれば, この種の変化は遺伝物質の変化を反映しているとのことであるが, ギムザ染色, 分染法Gバンドによる染色体分析では直接関係すると思われる異常は認められなかった.
ISSN:0546-1448