II-2-3 健常者の食道入口部通過における左右差の検討

【目的】嚥下造影検査(以下VF)正面像で食道入口部通過に左右差が存在する場合, それを異常所見と考えることが多かった. Logemannら(1989), 紺谷ら(1991), 唐帆ら(1997)はそれぞれの研究の対照として健常者のVF正面像を検討しており, 必ずしも全例が両側通過でないことを報告している. しかし, 健常成人に固有の通過側があるか否か, その再現性についてまでは検討されていない. そこで今回, 健常成人について食道入口部通過における左右差の有無および再現性の検討をすることを目的とした. 【対象, 方法】明らかな嚥下障害を有さない成人男女115人(20~64歳)を対象とした. 対...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 7; no. 2; p. 216
Main Authors 瀬田 拓, 稲田晴生, 宮野佐年
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2003
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ISSN1343-8441

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Summary:【目的】嚥下造影検査(以下VF)正面像で食道入口部通過に左右差が存在する場合, それを異常所見と考えることが多かった. Logemannら(1989), 紺谷ら(1991), 唐帆ら(1997)はそれぞれの研究の対照として健常者のVF正面像を検討しており, 必ずしも全例が両側通過でないことを報告している. しかし, 健常成人に固有の通過側があるか否か, その再現性についてまでは検討されていない. そこで今回, 健常成人について食道入口部通過における左右差の有無および再現性の検討をすることを目的とした. 【対象, 方法】明らかな嚥下障害を有さない成人男女115人(20~64歳)を対象とした. 対象者の右胸鎖関節部に寸法の対照として直径20mmのコインを貼り, 椅子座位をとってもらった. 40%バリウム5ccの自由嚥下を連続3回, 正面より撮影した. 最後に30cc嚥下正面像を追加した. 1昼夜以上間隔を開けて, 再度5ccの自由嚥下を3回くり返した. 【判断基準】右(左)梨状窩が全く造影されない, または右(左)梨状窩下端より食道が5mm未満しか造影されない時, 左(右)のみ通過と判断した. 右(左)梨状窩より流出するバリウムの幅が対側の1/2未満である時, 左(右)優位通過と判断した. 【結果】30cc嚥下では上部食道全体が造影されたため, 粘膜に病変がないこと, 左右の食道側壁の位置が確認できた. 対象者の5cc嚥下正面像を検討し, 上部食道の造影パターンを左のみは2種類, 左優位2種類, 右優位1種類, 両側2種類の合計7種類に分類することができた. それぞれのミラーパターンを合わせて, 13種類の上部食道造影パターンを定義した. 通過側は両側60%, 左側(左のみ+左優位)31%, 右側(右のみ+右優位)9%であった. 造影パターンには高い再現性が認められた. 【結語】健常者のVF正面像における, 上部食道造影パターンの分類をした. 健常成人の約40%に食道入口部通過の左右差が認められた.
ISSN:1343-8441