57 足部のアライメントが前方への重心移動に及ぼす影響

我々は先行研究において足部のアライメントと立位での前方重心移動時の足圧中心位置を検討した結果, 静止立位では内側縦アーチの低下が, 前傾立位では後足部の外反が足圧中心位置をより前方へ変位させることを確認した. 自然な足位は下腿の捻転を反映して距骨下関節が中間位をとり易く前足部の回内運動によって足部の剛性が低下し, 後足部の外反は横足根関節の回内と連動して足圧中心を前方へ移動させやすいと考えられた. しかし, 足圧中心の移動には足部と運動連鎖を生じる下肢のアライメントも影響を及ぼすと考えられる. 本研究では, 下肢の関節運動角度を指標に, 足部のアライメントが立位での前方への重心移動に及ぼす影響...

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Published in理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 29
Main Authors 田中則子, 淵岡聡, 小柳磨毅, 橋本雅至, 向井公一, 中江徳彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2004
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Summary:我々は先行研究において足部のアライメントと立位での前方重心移動時の足圧中心位置を検討した結果, 静止立位では内側縦アーチの低下が, 前傾立位では後足部の外反が足圧中心位置をより前方へ変位させることを確認した. 自然な足位は下腿の捻転を反映して距骨下関節が中間位をとり易く前足部の回内運動によって足部の剛性が低下し, 後足部の外反は横足根関節の回内と連動して足圧中心を前方へ移動させやすいと考えられた. しかし, 足圧中心の移動には足部と運動連鎖を生じる下肢のアライメントも影響を及ぼすと考えられる. 本研究では, 下肢の関節運動角度を指標に, 足部のアライメントが立位での前方への重心移動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 健常青年女性7名(年齢22.9±0.8歳, 身長157.0±3.5cm, 体重52.6±6.4kg, 足長22.9±0.8cm) 1)足部評価:右足のLeg-heel-alignment(以下LHA), 踵骨傾斜角度, 立位でのアーチ高率(舟状骨高/足長)を計測した. 2)運動課題の解析:被験者には両上肢を胸の前で組んだ両脚立位(自然な足位)から, 足底を接地したままで前方へ最大に重心移動させた. 被験者の左右の肩峰, 大転子, 膝外側穎, 外果, 第5中足骨に身体指標を貼付し, 課題時の運動をVICON512にて記録, WAVEEYES(日本臨床歩行分析研究会)を用いて動作時の股関節, 膝関節, 足関節角度を算出した. なお, 静止立位での各関節屈曲角度を0度と定義した. 3)統計処理:足部評価の各指標と最終肢位での下肢の各角度との関係を, spearmanの相関係数を用いて検討した. 有意水準はいずれも5%未満とした. 踵骨傾斜角と最終肢位での膝関節屈曲角度には有意な負の相関関係を認めた(r=-0. 83, p<0. 05). LHAならびにアーチ高率と, 下肢の各関節角度にはいずれも有意な相関関係を認めなかった. 踵骨傾斜角と最終肢位での膝関節屈曲角度には有意な負の相関関係を認めた(r=-0. 83, p<0. 05). LHAならびにアーチ高率と, 下肢の各関節角度にはいずれも有意な相関関係を認めなかった. 後足部の外反は立位の前方への重心移動において, 下腿内旋, 膝関節外反, 大腿内旋の運動連鎖を生じる. このとき大腿骨の内旋量が大きいと下腿は大腿骨に比して相対的に外旋位をとり, locking mechanismによって膝関節は靱帯により伸展保持されやすい. 一方, 後足部の内反は逆パターンの運動連鎖によって下腿は相対的な内旋位となって, 大腿四頭筋などの筋性支持の依存度が高い膝関節軽度屈曲位での姿勢保持が行われていると推察された.
ISSN:0289-3770