生殖細胞および初期胚における生殖腺特異的発現遺伝子(GSE)の発現および細胞内局在の解析
我々は、これまで生殖腺に特異的に発現する新規遺伝子Gse(gonad-specific expression gene)を単離している。しかしながら、精巣や卵巣におけるGse遺伝子のタンパク質レベルでの発現や、生殖腺で果たすその生理学的機能は未だ解明されていない。本実験では、独自に作製したGSEタンパク質を認識する抗体を用いて、生殖腺、卵および初期胚におけるGSEタンパク質の発現解析を行った。まず、GSEの推定アミノ酸配列から決定したペプチド(12AA)を抗原として抗GSEペプチド抗体を作製し、この抗体を用いて精巣及び卵巣を含む主要組織におけるウエスタンブロッド解析を行った。その結果、精巣及び...
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Published in | The Journal of reproduction and development Vol. 52; no. 3; pp. 429 - 438 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
01.06.2006
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-8818 |
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Summary: | 我々は、これまで生殖腺に特異的に発現する新規遺伝子Gse(gonad-specific expression gene)を単離している。しかしながら、精巣や卵巣におけるGse遺伝子のタンパク質レベルでの発現や、生殖腺で果たすその生理学的機能は未だ解明されていない。本実験では、独自に作製したGSEタンパク質を認識する抗体を用いて、生殖腺、卵および初期胚におけるGSEタンパク質の発現解析を行った。まず、GSEの推定アミノ酸配列から決定したペプチド(12AA)を抗原として抗GSEペプチド抗体を作製し、この抗体を用いて精巣及び卵巣を含む主要組織におけるウエスタンブロッド解析を行った。その結果、精巣及び卵巣以外の組織ではGSEタンパク質の存在は認められなかったが、精巣ではGSEの推定分子量と同じ約27.6kDaと23.1kDaの2つのアイソフォームが、また卵巣では27.6kDaのアイソフォームが認められた。次に、精巣における免疫組織化学的解析から、GSEタンパク質は精細管内のパキテン期の第一精母細胞から伸長精子細胞までの精細胞の核に発現していることが明らかにされた。一方、卵巣におけるGSEタンパク質は、原始卵胞内の卵母細胞には既に発現し、排卵直前のグラーフ卵胞内の卵母細胞においても発現していることが観察された。免疫染色解析の結果、MII期の卵母細胞では核と細胞質の両方にGSEタンパク質の局在が明らかになり、さらに、受精直後の前核期ではGSEタンパク質の核移行が示され、その後胚盤胞期までその存在が観察された。とくに、胚盤胞では栄養外胚葉(E)と内細部胞塊(ICM)の双方の細胞にシグナルが見られたが、Eに比べICMで強いGSEタンパク質の発現が確認された。以上の結果より、Gse遺伝子は、生殖細胞や初期胚で発現して、核移行することで細胞の未分化の維持に関与する可能性が示唆された。 |
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Bibliography: | 730463 ZZ00014744 |
ISSN: | 0916-8818 |