希少野生鳥類において外来遺伝子導入に使用可能な羽毛濾胞幹細胞の確立

希少野生鳥類における有効な遺伝資源として羽毛濾胞細胞に着目し、そのケラチノサイト幹細胞の培養系を確立して、遺伝子操作に使える細胞としての可能性を検討した。成熟した白色レグホン種の発育途上の羽毛から羽毛濾胞細胞を採取し、白血病抑制因子(LIF)を培地に添加して、ケラチノサイトコロニー形成細胞(KCFC)としての性質を維持した。キャリヤーとしてEGFPN1を組み込んだレトロウイルスベクターを用い、リポフェクションによりGFP遺伝子をKCFCに導入した。繊維芽細胞様の細胞を除いてから、KCFCは播種後24時間以内に培養プレートに接着し、LIFの存在下で少なくとも30日間は増殖した。増殖中のKCFCに...

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Published inThe Journal of reproduction and development Vol. 49; no. 3; pp. 213 - 219
Main Authors 席, 咏梅, 名田, 陽一, 宗, 知紀, 藤原, 昇, 服部, 眞彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.06.2003
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ISSN0916-8818

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Summary:希少野生鳥類における有効な遺伝資源として羽毛濾胞細胞に着目し、そのケラチノサイト幹細胞の培養系を確立して、遺伝子操作に使える細胞としての可能性を検討した。成熟した白色レグホン種の発育途上の羽毛から羽毛濾胞細胞を採取し、白血病抑制因子(LIF)を培地に添加して、ケラチノサイトコロニー形成細胞(KCFC)としての性質を維持した。キャリヤーとしてEGFPN1を組み込んだレトロウイルスベクターを用い、リポフェクションによりGFP遺伝子をKCFCに導入した。繊維芽細胞様の細胞を除いてから、KCFCは播種後24時間以内に培養プレートに接着し、LIFの存在下で少なくとも30日間は増殖した。増殖中のKCFCにおいて、インテグリンβ1やCD49cのような細胞接着タンパク質は免疫細胞化学的には陽性であった。LIFを培地から取り除くと、KCFCは分化して羽小枝や羽状の構造をとることが観察された。GFP遺伝子を導入したKCFCでは、緩やかな細胞増殖を示すものの継代してもコンスタントなGFPの発現が認められた。以上の結果から、羽毛濾胞細胞由来のKCFCは羽毛への分化能を有する幹細胞の性質を示すことが明らかにされ、この細胞を用いた鳥類におけるキメラ作成のための遺伝子操作の可能性が示唆された。
Bibliography:ZZ00014744
672441
ISSN:0916-8818