脳卒中片麻痺者に対する動的制動訓練(DYJOC訓練)が下肢の荷重に与える影響について
はじめに】動的関節制動訓練は固有受容器より中枢神経を経て, 効果器である筋に至る回路の機能を改善し, 神経-運動器のより良い協調により関節の安定化と外力や状況変化に即座に対応させる訓練である. 前回の学会ではこの訓練が脳卒中片麻痺者の立位のバランスにどのように影響するかを立位時の重心動揺を指標として検討を行った. 先行研究により姿勢の左右の非対称性は立位バランスの低下につながることが報告されているが, 片麻痺者は一般的に立位時に麻痺側下肢には体重負荷が少なく, 立位バランス低下の要因の一つになっている. 今回はDYJOC訓練が麻痺側下肢の荷重に対してどのように影響を及ぼすかをシングルケースデザ...
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Published in | 理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 385 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会 Japanese Physical Therapy Association (JPTA) |
Subjects | |
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | はじめに】動的関節制動訓練は固有受容器より中枢神経を経て, 効果器である筋に至る回路の機能を改善し, 神経-運動器のより良い協調により関節の安定化と外力や状況変化に即座に対応させる訓練である. 前回の学会ではこの訓練が脳卒中片麻痺者の立位のバランスにどのように影響するかを立位時の重心動揺を指標として検討を行った. 先行研究により姿勢の左右の非対称性は立位バランスの低下につながることが報告されているが, 片麻痺者は一般的に立位時に麻痺側下肢には体重負荷が少なく, 立位バランス低下の要因の一つになっている. 今回はDYJOC訓練が麻痺側下肢の荷重に対してどのように影響を及ぼすかをシングルケースデザインの手法を用いて検討を行った. 【対象】対象者は1名の脳卒中片麻痺者である. 69歳, 女性, 診断は脳出血右片麻痺で, 測定時発症から2.5ヶ月が経過していた. 身長146cm体重43kg, 麻痺側の運動機能はBrunnstrom stageで上肢, 下肢ともstage5であり, 運動は分離しているが動きに円滑さを欠いていた. 足底の深部感覚は異常なかった. 測定の内容や指示の理解には問題がなかった. また立位バランスに影響する高次機能障害などはみられなかった. 【方法】1回の理学療法の中で筋力強化や基本動作, 歩行訓練などの従来のPTの内容にDYJOC訓練を含んだ時と従来のPT内容のみを行った場合(以下N-DYJOC訓練時)を交互に5回繰り返し, 個々の訓練の前後に両下肢の荷重量を左右別々に計測した. 計測は重心動揺計上で自然な立位を1分間とり続け, その平均加重量を導いた. DYJOC訓練としての訓練内容は, 底部が半球形をしたDYJOCボードに麻痺側の足部をのせ, 立位にてできるだけ体重を負荷させながらバランスを保持する動作を間欠的に5分間実施した. 【結果】各訓練施行時における訓練開始と終了時点で比較するとN-DYJOC訓練時は5回中4回で麻痺側荷重が1kg低下していた. 一方, DYJOC訓練時は5回中3回で麻痺側荷重が1kg増加していた. その他の施行時は変化が見られなかった. 【考察】N-DYJOC訓練の場合は訓練後において麻痺側荷重は若干減少している. これは支持が不十分な麻痺側下肢が訓練の疲労により非麻痺側への体重負荷の依存が大きくなったものと思われる. 一方DYJOC訓練時においては訓練の疲労についてはN-DYJOC訓練時と比較しても違いはないと思われるが, DYJOC訓練により下肢の深部感覚が良好となり, バランス調整力が向上し, その直後の効果として大きな荷重が可能になったのではないかと考えられる. |
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ISSN: | 0289-3770 |