エピジェネティクス医学の最前線

DNA塩基配列そのものには変化は無いが, DNAメチル化などにより遺伝子発現が変化する現象をエピジェネティクスと呼ぶ. エピジェネティクス異常は, 従来先天異常の発症過程や癌化過程において研究されているが, これらだけではなく, 最近精神疾患や心疾患などにおいても報告されるようになってきた. エピジェネティクスは従来にない新しいパラダイムを医学研究にもたらす可能性が高く, 本シンポジウムではエピジェネティクスと疾患の関連の研究を行っている専門家に最先端の研究の現状を紹介して頂き, この領域を展望したい. 小児科領域では, エピジェネティクス異常に起因するさまざまな疾患がある. ゲノム刷込み疾患...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 62; no. 2; pp. 256 - 257
Main Author 湯浅保仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生学会 01.03.2007
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ISSN0021-5082

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Summary:DNA塩基配列そのものには変化は無いが, DNAメチル化などにより遺伝子発現が変化する現象をエピジェネティクスと呼ぶ. エピジェネティクス異常は, 従来先天異常の発症過程や癌化過程において研究されているが, これらだけではなく, 最近精神疾患や心疾患などにおいても報告されるようになってきた. エピジェネティクスは従来にない新しいパラダイムを医学研究にもたらす可能性が高く, 本シンポジウムではエピジェネティクスと疾患の関連の研究を行っている専門家に最先端の研究の現状を紹介して頂き, この領域を展望したい. 小児科領域では, エピジェネティクス異常に起因するさまざまな疾患がある. ゲノム刷込み疾患では小児期から発達障害をひきおこすし, DNAをメチル化させる酵素やメチル化されたDNAに結合する蛋白質などの異常は, 免疫疾患や自閉症疾患を発症させる. 異常メチル化状態の是正による治療の可能性についても言及して頂く. がんは, エピジェネティクスが深く関与する分野である. DNAメチル化異常に代表されるエピジェネティックな変化は, 細胞分裂時に忠実に複製され, 発がんの原因となる. 胃がん症例とその非がん部のメチル化の解析から, DNAメチル化異常を用いた発がん要因暴露と発がんリスク評価が, どのようながんで可能なのか明らかにしていく必要性がある.
ISSN:0021-5082