5 日本産のPhlebotomus属サシチョウバエについて

リーシュマニア症の感染者は88カ国で1200万人, 年間の死亡者数は約6万人であり, 媒介昆虫はサシチョウバエである. サシチョウバエは世界で500種以上が知られており, そのうちヒト寄生原虫種を媒介する種類は約30種とされている. 我が国においては1923年にR. newsteadにより, アジアにおける唯一の媒介昆虫であるPhlebotomus属サシチョウバエの1種Phlebotomus squamirosotrisの存在が初めて報告された. 以来, 愛媛県2頭, 山口県1頭(Newstead, 1923), 群馬県1頭(徳永, 1940), 京都市27頭(篠田, 1951), 福井県21...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 61; no. 2; p. 159
Main Authors 三條場千寿, Yusuf Ozbel, 麻田正仁, Gantuya Sumbuu, 長田康孝, 宮城一郎, 松本芳嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 15.06.2010
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
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ISSN0424-7086

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Summary:リーシュマニア症の感染者は88カ国で1200万人, 年間の死亡者数は約6万人であり, 媒介昆虫はサシチョウバエである. サシチョウバエは世界で500種以上が知られており, そのうちヒト寄生原虫種を媒介する種類は約30種とされている. 我が国においては1923年にR. newsteadにより, アジアにおける唯一の媒介昆虫であるPhlebotomus属サシチョウバエの1種Phlebotomus squamirosotrisの存在が初めて報告された. 以来, 愛媛県2頭, 山口県1頭(Newstead, 1923), 群馬県1頭(徳永, 1940), 京都市27頭(篠田, 1951), 福井県21頭(江崎, 1953), 青森県で9頭(緒方, 1958)が記録されているにとどまる. 近年では, 宮城が2004年4, 5月および2005年6月に沖縄県にて数頭のサシチョウバエを採集している. 現在の我が国におけるサシチョウバエの棲息状況を明らかにするため, 秋田県(2009年7, 8月), 群馬県(2008年7月), 沖縄県(2008年4, 5月)においてオイルトラップおよびCDCライトトラップを用いサシチョウバエの採集を試みた. その結果, 秋田県で27頭(雄15頭, 雌12頭), 群馬県で491頭(雄369頭, 雌122頭), 沖縄県で192頭(雄157頭, 雌35頭)を採集した. さらに, 群馬県で採取した雄60頭, 雌60頭について解析を行ったところ, 形態学的特徴は1923年に記載されたP. squamirosotrisと同じであった. 国際化による地球規模でのヒト, 動物, 物資の移動, 地球温暖化などの要因により, サシチョウバエの棲息域が拡大し, リーシュマニア症の流行地も拡大しつつある. 我が国におけるサシチョウバエの棲息およびその媒介性の調査は緊急の課題と考える.
ISSN:0424-7086